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ユーザーを訪ねて

2023年秋号のユーザーを訪ねて

No.195

製品カテゴリ:MX SeriesMX-330

MX-330 PC10 が広げた可能性

有限会社 沓名製作所 様

 

今回のユーザーを訪ねては名神・東名高速道路の小牧ICから車で5分の距離にある、有限会社沓名製作所です。同社は産業用ガスメーター部品や、航空・防衛関連部品を中心に、幅広い業界向けの金属加工を手掛ける企業です。旋盤とマシニングの双方で高い技術力を持ち、特殊材や難削材の加工においても高い実績を誇ります。

取材には沓名俊輔 代表取締役にご対応頂きました。沓名代表は同社の3代目にあたります。家業を継ぐに至った経緯を伺いました。「根っからの文系人間で、学生時代は名古屋外国語大学で英語を学びました。学生生活を送る中で海外放浪に憧れました。留学という選択肢もありましたが、現地に溶け込む形で、海外の文化や風土に触れたかったのです。2年次に休学し、渡航資金を稼ぐため大手自動車メーカーの期間工として働きました。まとまった資金が出来たところで夢だった海外放浪の旅に赴きました。アジア圏を中心に様々な国を渡り歩きましたが、開始から半年程が経った頃、先代である父が倒れたとの一報を受けました。急遽、旅を中断し帰国したところ、幸い父の容態は回復しましたが、これを機に自身が会社を継ぐことを決心しました。正直、当時はもっと旅を続けたい思いもありましたが、海外で培った物怖じせず何事にも前向きにチャレンジする精神は、経営者となった今でも活かせているように感じます。」と沓名代表。

事業継承の失敗例だった

同社の創業は1946年。大手重工業メーカーで製造に携わっていた沓名代表の祖父が、終戦後に独立したことから事業がスタートします。「創業当初は切削や板金などの金属加工を個人で請け負っていたと聞いています。切削加工が主体となるのは祖父から父に代替わりし、マシニングセンタを設備した1990年頃からです。」と沓名代表。2004年に先代から事業を継いだ沓名代表ですが、自身への代替わりについて『事業継承の失敗例だった』と振返ります。「海外放浪からの帰国後、すぐに家業を継ぐため大学を中退して当社に入社しました。しばらくは先代と、年配の従業員さん、私の3名で業務にあたりました。しかし、私が働き始めて半年後に、先代が他界しました。同時期に先代と共に働いた従業員さんも定年を迎えたことで、当時21歳の私ひとりで代表に就任する運びとなりました。わずか半年の期間では先代のノウハウを受け継ぐことは出来ませんでした。現在も当社の主力となっているガス流量計の基幹部品は、先代の頃から受注していた製品ですが、その加工方法についてもワーク着脱程度しか教わっていません。お客様に満足頂けるクオリティに仕上げるまでは、文字通り、手探りの状態でした。それでも何とか事業を続けられたのは、先代が遺してくれた工場建屋と機械設備があったからこそだと思います。苦しい時期ではありましたが、お客様からお叱りを頂きながら一人で試行錯誤した日々も、今となっては懐かしく思い出されます。」と沓名代表。

GibbsCAM から非対話型NC機へ

同社では現在4台のマシニングセンタが設備されており、うち1台が2020年11月に設備した5軸制御立形マシニングセンタMX-330 PC10です。マツウラ機の設備に至った背景について伺いました。「MX-330 PC10の設備以前は、他社製の立形・横形マシニングセンタを使用していました。いずれも対話型NC搭載機です。そのような中でマツウラ機の設備に至るには、1990年に設備したGibbsCAMの存在が影響しています。2.5次元や3次元加工に対応する目的で設備しましたが、その恩恵は大きかったです。従来は直角形状のみだったところに曲面も加工できるようになり、仕事の幅が格段に広がりました。GibbsCAMへの習熟度が高まるにつれて、従来は設備して来なかった、非対話型NC搭載機も選択肢に入るようになりました。対話型、非対話型の両方を設備することで相互に補完できれば、業務の幅も広がると考えたのです。」と沓名代表。

あらゆるニーズを満たした機械

GibbsCAM の存在がマツウラ機の選定に繋がったと語る沓名代表。最終的にMX-330 PC10 を選んだ決め手について伺いました。「とあるマツウラユーザーで、複数のMAM72 シリーズを活用し、夜間休日の無人運転を実現されている企業を見学する機会がありました。そこで見たMAM72 シリーズのコンセプトに強く感銘を受け『自社に設備できれば面白いことになる』と直感しました。しかし、当時から限られた建屋内に多数の機械を設備していた当社では、フロアスペースに制約があります。コンパクト設計、5軸制御、マルチパレット、高速加工など、当社のあらゆるニーズを満たした機械で検討を進める中で、MX330 PC10 の設備に至りました。」と沓名代表。

営業面でも効果を発揮

「正直なところ、MX-330 PC10の設備を決めた時点では、どの様なワークを加工するか明確なイメージはありませんでした。将来的な工場の自動化・効率化に向けた先行投資的な意味合いが強かったのです。そこで導入後は先ず、従来の立形・横形機で多工程を掛けていた、リピート性が高い部品、あるいは量産性の高い部品の加工をMX-330 PC10に代替させることで工程集約を図りました。余裕の出た立形・横形機を新規の受注に割り当てることで、工場全体の稼働率を高めるイメージです。また当然ながら、5軸機の設備により対応できる加工の幅は格段に広がります。例えば、ある半導体製造関連の部品ではMX-330 PC10でΦ0.06の細穴加工を行っています。必要であればΦ0.1の斜め穴加工にも対応できます。難形状の加工にも対応できることで、防衛関連部品で新規の引き合いもありました。MX-330 PC10の存在は営業ツールとしても効果を発揮しています。」と沓名代表。

悩めるだけの可能性が広がった

取材の最後に今後の展望を伺いました。「マツウラ機設備のきっかけになった、夜間休日の無人運転はひとつの理想形です。しかし当社工場の周囲は住宅に囲まれており、騒音などの懸念から本格的な夜間運転には乗り出せていません。また以前と比べ設備も増え、スペースも手狭になりました。将来的には新工場への移転を検討していますが、先ずは既存設備を最大効率で稼働させる方法を確立することが、目下の課題です。新工場を理想的な形でローンチする為の、いわば下地作りです。具体的な方向性に関しては、正直悩ましい部分もあります。同時5軸で複雑な形状を加工する仕事は恰好良いですし、多品種少量品をマルチパレット活用で自動化することも可能です。またマツウラがセミナー等でもPRしている量産部品の多数個取りで収益を向上させる手法も魅力的です。いずれの道にもメリットとデメリットは存在するので、経営者として慎重に吟味する必要があるでしょう。ただ、向かうべき方向に悩める事は、言い換えればそれだけ可能性が広がった事を意味します。MX-330 PC10の設備は間違いなく当社の可能性を広げてくれました。新工場への移転後にMXシリーズを複数台増設し、更にMAM72シリーズも設備して…と仮定すると、難形状にも多品種少量にも量産部品にも、全方位的に対応可能な工場となるでしょう。当社の強みである切削技術を最大限に活かしながら、お客様からのあらゆるニーズに対応できる企業を目指しています。」と沓名代表。


「私事ですが、自社オリジナル製品をつくるという夢があります。それを社員全員が協働して生み出せたら素晴らしいですね。実現はまだ遠いですが、先ずは社員一人ひとりがアイデアを出し合える雰囲気づくりを進めています。屋台骨である金属加工技術を活かし、全社一丸でチャレンジできる企業であり続けたいです。」と沓名代表。インタビューと工場風景の動画は、記載のQRコードを読み取りご視聴頂くことができます。また、当社ホームページでも公開中です。ぜひご覧ください。

会社情報

会社名
有限会社 沓名製作所 様
本社
〒485-0047 愛知県小牧市曙町115番地
TEL
0568-71-1814
FAX
0568-71-1819
代表者
代表取締役 沓名俊輔
設立
1946年
従業員数
11名
事業内容
各種金属部品のNC旋盤加工、 マシニング加工、サブ組立

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