トピックス
ユーザーを訪ねて
2025年新春号のユーザーを訪ねて
No.199
MXシリーズの多台持ちで試作加工の短納期を実現。
株式会社 富士精機製作所 様
今回のユーザーを訪ねては、西武鉄道新宿線田無駅から徒歩11分の距離にある株式会社富士精機製作所です。取材には、代表取締役社長を務める永岡慶様に対応頂きました。
同社は1960年12月に現在の本社所在地と同じ田無市(現西東京市)にて永岡社長の祖父にあたる先々代の永岡実氏が創業。同氏は航空機メーカーのエンジニアで、創業当初は社員数名の規模で農業用エンジンの製造を行っており、時代の流れとともに部品加工業へと業態を変更。主に自動車メーカーより部品製造を請け負っていました。その後、先代の永岡健太郎氏が会社を引き継ぎ事業拡大、前述の自動車メーカーが埼玉県桶川市に工場を新設したことに合わせて、1994年7月に桶川工場を設立。社員数も40名程度まで増え、順調に規模を拡大させていった一方で、同自動車メーカーへの依存度が高いことが課題となります。この課題への解決策として始めたことが試作部品の加工でした。試作加工を開始後、取引先企業は順調に増え、2007年4月に埼玉県日高市に日高工場を設立。2015年5月には本社と同じ敷地内の田無工場が試作加工専門工場として新しく建て替えられ、現在に至ります。
事業承継:永岡社長就任
3代目として代表取締役を務める永岡社長は、早稲田大学の法学部にて法律を学び、卒業後は特許事務所で弁理士を務めていました。2019年に同社へ入社後、2022年に代表取締役社長へ就任。入社時について、永岡社長は次のように振り返ります。
「家業であるから継がなければならないということではなく、前職の特許事務所で業務中に様々な企業のブランディングに関わっていく中で経営への興味が強くなってきました。経営に携わる点において、幸い自分自身には家業を継ぐことができる環境にあるため、父である先代にお願いして入社させてもらいました。父はせっかく弁理士の資格を取得したのに勿体ないと感じていたようですが、私が入社することに内心喜んでいたようです。
入社後は、1年間で当社における商流や人、会社の経営状況を学び、2020年から舵取りを任され、その後、正式に代表取締役社長を受け継ぎました。私が社長に就任し、初めに実施したことは、組織運営の方法を確立することや社内のIT環境整備、会議運営の見直しなど、前職の職場で学んだことを活かして社内の仕組みをアップデートしていきました。」
マツウラとの出会い
同社のマツウラ機導入はMC-900HG PC6(1987年設備)から始まり、現在ではMX シリーズ16台をはじめ、全29台のマツウラ機を所有されています。今も同社の工場内で活躍するRA-3(1990年設備)などは同社にとってマツウラの5軸機を複数導入するきっかけとなりました。
「当社が試作加工を本格的に開始する際、5軸機を設備してみたかったということもあって、他社製の5軸機を導入しました。これを契機に5軸機によって職人が行う多くの工程を大幅に減らすことができることを理解できたものの、設備した5軸機の精度や使い勝手があまり良くありませんでした。そこで従来から利用しているRA-3 などマツウラ機の精度が良かったこともあり、以後、多くのマツウラ機を導入することとなりました。また、マツウラ機を設備する決め手として価格面でも素晴らしいと感じており、機能や機械の視認性、接近性などの使い勝手やパフォーマンスを考慮すると良い価格設定になっていると思います。」と永岡社長。
また、同社ではGibbsCAMも5シート導入しており、その使い勝手について、「GibbsCAMには一通りの機能が備わっており、それでいてオーバースペックすぎず使い易い点が良いと感じています。当社ではGibbsCAMも利用しながら、加工プログラムの手打ちもするという方法を取っており試作加工の生産スピードを高めています。GibbsCAMはそのような使い方にも柔軟に対応してくれます。」と永岡社長。
MXシリーズの多台持ち
同社に設備されているMX-520(9台)やMX-850(7台)はパレットチェンジャーが装着されていないモデルを選択されています。MXシリーズの選択について永岡社長は次のように話します。
「設備の購入検討にあたり、パレットチェンジャーによる自動化も勧められましたが、パレットチェンジャーの装備により設置スペースも大きくなり、価格も高くなります。また、マツウラをはじめとする5軸加工機は量産専門加工機に比べて生産スピードが遅いことをネックに感じていました。従来から量産のモノづくりをしてきた当社では、生産スピードを加工精度と同じレベルで求める為、機械を多台持ちにしてスピード面をカバーすることを進め、気付けばMXシリーズは16台になっていました。パレットチェンジャーを装備してもその機械の主軸はあくまで1本。そうであるなら、パレットチェンジャーを設置する面積にもう1台MXシリーズを設備して2個同時に加工を流したほうが良い、という発想です。自動化・無人運転については、それらが対応可能な産業の競合他社が多く、あまり積極的には考えていません。むしろ当社では、あらゆる産業の複雑な加工を行いたく、試作加工、量産加工ともに5軸機の積極的な活用を進め、技術者の育成や品質管理体制の構築等に注力しています。
マツウラの5軸機は作業者の持つ力を何倍にも引き上げていると感じていますが、それも一朝一夕ではなく、初号機を導入してから10年以上かけて技術や経験値を積んで、当社独自のMX シリーズの活用方法が確立できてきたと考えています。」
マシニングの『スピード』を逆手に取り、多台持ちという発想は同社ならではと感じました。パレットチェンジャーが全てのユーザー様に合うのかという事を再認識させていただき、これからもマツウラとしてのベストなご提案をさせていただきます。
人材育成と評価について
同社ではマツウラがユーザー向けに開講しているマツウラスクールやGibbs講習に積極的に受講いただいております。その他、同社ならではの人材育成に力を入れています。
「近年は、新入社員には入社から3年で段取り替えを単独でできるようにするという方針で教育を行っています。社内のOJTと機械メーカーが行うマツウラスクールなどの講座を組み合わせて教育をし、CAM操作や図面の読み方の指導、時には加工の課題を出しながら、加工の基礎を築き上げていきます。その後は、試作加工もしくは量産加工のどちらに適性があるかを見極め、若い人に将来の道筋をしっかりと見せることを意識しています。」
「各個人の業績評価については、任意で「自己評価シート」を私に提出してもらい、何を頑張ってきて、何が足りなかったのかを1人1人面談で話し合います。そのうえで可能な限り客観的な評価を行っています。また、当社の売上高、加工費、経費、不具合などの経営情報や加工技術情報、取引先の情報などを専用ポータルサイト上で全社員が閲覧できるようにし、できるかぎりオープンにしています。社員の皆さんには、会社の現状を理解してもらって、自分の成果がどのように会社に反映されているのか、自分がすべきことは何なのかを自主的に考えてもらいたいと思っています。そして、自身の給料は会社からもらっているのではなく、お客様から頂いているという視点を持ってもらうことが何より大切だと思っています。これからの時代を生き残っていくには、社員1人1人の力が必要であり、その上で、3工場が団結をし、全員で同じ方向に向かっていかなければなりません。今は、少しずつですが手応えを感じ始めています」と永岡社長。
富士精機製作所の強み
①試作工場と量産工場が両立している
同社の最大の強みは、試作工場の田無工場と量産工場の桶川工場、日高工場に明確に役割が分かれていることで、急な試作品の依頼に対しても量産が忙しくて対応できない、といったことはありません。また、試作から量産に切り替えたい場合も同社で全て対応可能ですので、安心感があります。
②業界問わず様々な依頼を受注
半導体、光学機器、ロボット、航空、自動車など様々な業界から加工を請け負っているからこそ、豊富な技術と経験が同社に蓄積しており、最高品質の製品を提供しています。
③真の一気通貫生産で他社にはない高品質を提供
素材手配から、加工はもちろん、最終塗装まで同社が責任を持って品質管理を行います。前工程の素材作りと後工程の塗装をしっかり理解したうえで加工する必要がある加工工程を担う同社であるからこそ、最も品質に関わることのできる立ち位置でお客様の求める最高の品質をお送りしています。
今後はさらに異分野の受注に対応するための技術向上と品質管理体制の構築などに注力していくとのことです。
本社の社屋外観はモダンな外観をしており、内部もパステルカラーの壁紙が採用され、随所にアート作品が飾られているなど、一般的な部品加工業のイメージとは大きく離れたデザインをしています。その中でも事務所内で特に目立っているのが、デザイン性に富んだ椅子の数々。先代からのコレクションでもあり、ビンテージ品が並んでいます。極めつけは社長室で、椅子はもちろんのこと、書棚や各オフィス家具もこだわりの品が並んでおり、眺めているだけでも楽しい部屋でした。インタビュー動画では、永岡社長へのインタビューを社長室にて撮影しておりますので、ぜひ室内も注目してご覧ください。
会社情報
- 会社名
- 株式会社 富士精機製作所 様
- 本社・
田無工場 - 〒188-0014 東京都西東京市芝久保町1-5-2
TEL:0424-61-3117 - 日高工場
- 〒350-1203 埼玉県日高市旭ヶ丘字竹の台653
- 桶川工場
- 〒363-0002 埼玉県桶川市大字赤堀1-39-1
- 代表者
- 代表取締役社長 永岡 慶
- 創立
- 1960年12月5日
- 従業員数
- 62名
- 事業内容
- ・ 自動車部品、船舶部品、航空部品、防衛部品、 光学・電子部品、半導体部品の精密加工
・ 試作段階製品の精密加工