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ユーザーを訪ねて
号のユーザーを訪ねて
起業1年で5軸制御立形マシニングセンタMX-520を設備し通信機器部品の高品位加工を行う
テクニカルエンジニアリング株式会社 様
今回のユーザーを訪ねては、JR埼玉線の南古谷駅より南東に車で15分ほどのテクニカルエンジニアリング株式会社を取材しました。取材には溝口正俊社長に対応頂きました。同社の起業は平成24年9月で、会社の歴史は1年数ヶ月と若い会社です。溝口社長が起業され、現在一人で会社を運営しています。社屋は真っ白な建物で、周囲は田園が広がる静かな環境です。起業にいたる経緯などを取材しました。
子供のころから起業を決意
溝口社長の実家では、父親がアルミダイカストの会社を経営しています。「子供のころから、家業を継ぐ意思はありませんでした。学校では経営学を学びましたが、そこである先生との出会いが人生への考え方を大きく変えまし
た。入学式でその先生は、『君たちの親は今までに学費として1000万円以上は掛けている。更に遊ぶのか』と叱咤されました。また私がクラス全員の販売士(流通業界での唯一の公的資格)合格の責任者に指名され、卒業までに全員の合格を勝ち取り、経営とリーダーシップを学びました」と。
「卒業後幸運にも大手通信機企業に就職し通信機器全般の営業を担当しました。当時はITバブル真っ盛りで、IT企業を起業しようと辞表を提出。しかし次の担当者との引継ぎに1年かかり、退職時にはITバブルがはじけ起業できる状況ではありませんでした。そこで父の会社に入社し、次の仕事のアイディアが出来た時に起業するつもりでした」と溝口社長。
父親の会社で修業
「アルミダイカスト製作には全く経験がなく、毎日忙しく深夜まで働きました。しかし、一向に企業収益が上がらないことに疑問を持ちました。そこで、会社の帳簿を初めて見ました。学校で経営学を学んでいたので、仕入れ金額や原価を見て、利益が殆ど出ない状況が分かりました。アルミダイカストの製作は、ワンショットの単価が決まっています。簡単なもの、難易度の高いものも一律の単価です。父は金型の設計も行っており、アルミダイカスト製作には精通していたので、難しいダイカストを多く受けていました。このままでは利益が出ないと考え、アルミダイカスト製作だけでなく、加工まで行うことで付加価値を付けることを提案し、私が責任者で実施しました」と溝口社長。
部品加工への挑戦
同社では、加工経験者はいません、また加工機もない状態で営業を開始しました。取引先は、一括で引き受けてくれるので仕事を頻繁に出してくれました。しかし、自社では加工が出来ないので協力会社へお願いして加工を行っていました。「ある時に、大手計測機器メーカーからダイカストでなく、削り出しの仕事依頼が来ました。簡単な加工でしたが、協力会社はダイカスト加工会社ばかりで満足な加工が出来ませんでした。不十分な加工品質でしたが、この大手計測機器メーカーは引き続き仕事を出してくれました。その後この会社は私が起業する時に大変な協力をしてくれることになります」と。
「加工を協力会社に委託していましたが、1年ほどで回らなくなり納期が守れない状況になりました。自分でやるしかないと決意。協力会社が設備している複合旋盤を見て、旋盤もマシニングの両方の機能があり、これだと思い設備しました。しかし、加工が素人なので満足に動かすことが出来ませんでした。ところが、協力会社の人達に助けられ、また加工のノウハウまで教えてくれ、2,3年でどんな図面でも対応できるようになりました。また協力会社も増え、会社は順調に業績を上げていきました」と溝口社長。
独立に向けての準備
溝口社長は、当初IT企業で起業しようと思っていました。しかし、納品した部品がお客様のところで完成品になるのを見て感動し、製造業で独立しようと思うようになりました。「起業した時に機械がないと仕事が出来ないと考え、平成16年にドリルセンターを私の資金で購入し、工場に設備しました。大手計測機器メーカーの加工を、この機械で行っていました。アルミダイカストの仕事は、将来アジアがメインになるので部品加工で起業しようと考えていました。工場長の役職にありましたが、社員には何時辞めるか分からないと言っていました」と。
「大手計測機器メーカーの仕事は、ある会社を通じて依頼を受けていました。しかし、トラブルが起きた時に、直接このメーカーの担当者と話す機会に恵まれました。加工部品は携帯電話の基地局に使われていました。以前大手通信機器メーカーで働いていたので専門用語が分かり、また部品を見てバリがあるとショートする可能性がありますね、そういう環境であれば防水をしないと腐食しますね、と会話がスムーズに進みました。それから仕事が一気に増え、また直接仕事を頂ける関係になりました」と溝口社長。
チャンスに恵まれて独立
「機械も導入し、お客様も大手計測機器メーカーがあり、後は工場さえあれば何時でも独立できる状況でした。そして縁あって現在の工場が借りられることになりました。この工場は、金型工場として建設されたもので、天井クレーンがあり、また床の構造もしっかりしているので機械加工に適した工場でした。早速契約となりましたが、会社名を全然考えていませんでした。妻のカナダ人の友人に“技術的な業務を行ない、将来はグローバル展開したい”と会社名を相談したところ、テクニカルエンジニアリングを提案されました。将来IT関連業務拡張なども考えているので、この会社名に即決しました。2週間で会社を設立し、その後1週間で会社を辞めました」と溝口社長。
5軸加工機の導入
「父の会社にあったドリルセンターを移設し、平成24年9月に起業しました。大手計測機器メーカーの加工は私が担当していたので、この新しい会社で全て行うことになり、仕事量も確保でき順調なスタートが出来ました。日本
の製造業を考えると、大量生産はアジアに移行し、多品種少量生産が主流なると思っています。多品種少量生産に対応するには、1回段取りであらゆる方向から加工が出来、それにより自動運転時間が長くなるので省力化が可能な5軸加工機が不可欠と考えていました。それ故、この会社に入れる最初の機械は絶対に5軸加工機と決めていました。銀行の融資担当者の支援もあり、起業から1年3ヶ月でマツウラの5軸制御立形マシニングセンタMX-520を平成25年12月に導入しました」と。
「通信機器の部品は、コネクターの取り付く穴位置の精度、また加工した面粗度が要求されます。ハイスペックな部品が、MX-520で作れています。品質には関係ありませんが、面取りも同時に加工しています。一定寸法の面取りは部品の品位を高め、仕事先から高評価を受けています。将来は長時間無人運転が可能な5軸制御立形マシニングセンタMAM72-35Vの導入を目標にしています」と溝口社長。
37歳で起業し、1年目から黒字化、また5軸加工機導入と溝口社長の勢いを感じます。しかし、「多くの人々に助けられて今があり、それらの人々に感謝しています」と語る、その謙虚な姿勢に周りの人々が応援すると感じた取材でした。
会社情報
- 会社名
- テクニカルエンジニアリング株式会社 様
- 本社
- 〒350-0012 埼玉県川越市大字萱沼2352-2
- TEL
- 049-293-8975
- FAX
- 049-293-8965
- tec-mizoguchi@tec-saitama.jp
- 代表者
- 代表取締役 溝口 正俊
- 設立
- 平成24年9月
- 事業内容
- 通信機器、電子デバイス、測定機器 の部品加工(アルミ材主体)