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ユーザーを訪ねて
号のユーザーを訪ねて
No.153
製品カテゴリ:H.Plus-405
機械工具の一貫生産を行い、最新工具の開発を続ける
KTC(京都機械工具株式会社) 様
今回のユーザーを訪ねては、近鉄京都線・大久保駅から車で北西へ15分ほどのKTC(京都機械工具株式会社)を取材しました。取材には森和彦取締役、森田和也執行役員、西岡正晃部長に対応頂きました。同社の創業は戦前京都の繊維機械メーカーの工具部門が基礎でした。戦後、その会社の業務が機械製造中心になったのを機に、ハンドツールを極める事と自動車が将来主流になる事を見据え独立し、昭和25年に同社が設立されました。同年にトヨタ自動車搭載工具に採用され、自動車の普及に伴い事業を拡大していきました。同社は工具メーカーでは唯一、一貫生産工程で生産しています。各種鍛造、プレス・機械加工、熱処理、表面処理まで行い、生産コストの低減と高い品質保証を実現しています。現在、工具製造メーカーとして日本で質量ともにトップの企業です。
自動車産業を支える工具
「当社は、創業年からトヨタ自動車の搭載用工具に採用され、その後日本のモータリゼーションの進展とともに、業容を拡大することが出来ました。しかし、現在では搭載工具は自動車メーカーの標準でなくオプションとなり生産数は減っています。搭載工具は減少していますが、車の販売ディーラーが修理に使う自動車整備工具(スペシャルツール)は増えています。標準工具では手が入らず修理できない、または生産性が上がらない場合があります。そこで、これらの作業を改善する為に、当社は自動車メーカーのOEM工具生産を行なっています。設計は当社が行い、自動車メーカーの承認を受けて製作しています」と森取締役。
現在、工具のアイテムは12,000アイテムを超えています。基本的には、トヨタ生産方式の「かんばん」を用いた後工程引取り(後補充生産)生産をしています。また一方で自動車メーカー等からのOEM生産の依頼により受注生産も行っています。
平成7年には、世界のプロメカニックに対応した最高級工具「ネプロス」ブランドを発表、一流メカニックが集う鈴鹿サーキットでの公認ツールとして世界で初めて認定されました。また平成13年には「TOYOTA F1」チームにも採用される等、品質が認められてテクニカルパトナー契約を締結し、世界最高峰のモータスポーツF1にも同社の工具が多数使われています。
トルクが光と音で確認出来る“デジラチェ”の開発
「製造現場では、ネジの締付力を一定にするための工具としてトルクレンチが多く使われています。特に機械系の精密部品の組み立てでは、ネジの締め付け力を一定にしないと安定した品質が実現できないため、様々な締付力に合わせてトルクレンチが使われています。しかし、一般的に使用されているトルクレンチは機械式で使用者の熟練度により品質のバラツキが生じると言う欠点あります。そこで当社では、締付力が光と音で確認できるデジタル式トルクレンチ“デジラチェ”を開発しました」と西岡部長。
この“デジラチェ”は、ラチェットヘッド、メガネヘッド、六角棒ヘッド、自動車専用ブレーキツール、モンキータイプなどが準備され様々な用途に使えます。締付力を視覚で認識できることで、製造現場での品質管理に大きく貢献する工具となっています。
更に進化した“デジラチェ[メモルク]”の開発
“デジラチェ”の開発により、単に締付ける工具から品質保証に貢献できる工具がユーザーから求められるようになりました。「製造現場はベテラン社員の退職や、派遣社員の採用など作業環境が変化しています。こうしたことの影響からか、近年締結状態の不具合による重大事故が多発しています。大型自動車の車輪脱輪事故やパンタグラフの破損事故などです。これらを調査すると、そうした事故や不具合の原因は、“締め忘れ”“緩み”“締めすぎ”の3つに集約されるだろうと言われています。たかがボルト1 本ですが、企業の信用を大きく損ねる結果となっているのです。それらの作業を分析すると、締付け作業を確認して手書きで表にデータを記入、その後パソコンへ入力して管理されていました。そのため記入漏れや誤記、さらには改ざんといった問題が起こっていたのです。新たに開発された“デジラチェ「メモルク」”は、作業記録をそのままパソコンへ転送できるため、こうした問題も起きず作業の手間も軽減できます」と西岡部長。
締付け工具から、品質管理、作業改善する工具へ
パソコンで管理する作業表は、同社がお客様の作業に合った内容にカスタマイズすることができ、様々な用途展開が可能となっています。
1. 安全保障
・ 全締付けネジの締付けトルク値の電子管理
・ 全作業が合格値にならないと次工程に進めないポカヨケ
2. 品質保証レベルの向上
・ 締結保証として品質記録の提出
・ 過去の品質記録要求にもPC検索で即時提出が可能
3. コストダウン
・ 締付け、記録、管理の3人作業が1人で集約
・ 作業時間・人の作業順序など、作業履歴の管理
マツウラでも上記の目的で、4/5軸組立て作業で“デジラチェ[メモルク]”を採用しています。管理表の仕様を同社と打ち合わせをし、作業効率向上を図っています。これまでは単純に締付ける目的だった工具が、工程管理や品質管理、更には安全・安心を実現する工具へと進化しています。
横形マシニングセンタ「H.Plus-405 PC6」を導入
昭和57年に立形マシニングセンタ「MC-760V2」がマツウラとして初めて導入されました。それ以後も金型製作また部品加工用として11台の立形マシニングセンタが導入され、昭和5 8 年に導入された「MC-760VS」は30年近く経過していますが現役で稼働しています。今年3月に2面パレット装備の立形マシニングセンタ「RA-4G」が導入され、メガネレンチ等の鍛造金型製作に威力を発揮しています。更に9月には6 面パレットを付加した横形マシニングセンタ「H.Plus-405 PC6」が導入されました。「この機械は“デジラチェ”の部品生産や様々な工具の部品加工を長時間無人運転で稼働できるように6面パレット仕様としました。立形より横形の方が生産効率が良く、更なるコストダウンの実現を計画しています」と森田執行役員。
“デジラチェ[メモルク]”は、締める工具に、デジタル表示、通信、PC管理を結びつけ、安全で能率よく作業ができる商品となっており、この商品を通じて「安心できる社会」を提供しようとする深い意図が存在していたことを実感した取材でした。
会社情報
- 会社名
- KTC(京都機械工具株式会社) 様
- 本社
- (久御山工場) 〒613-0034 京都府久世郡久御山町佐山新開地128番地
- TEL
- 0774-46-3700
- FAX
- 0774-46-3734
- 代表者取締役社長
- 宇城 邦英(うしろ くにふさ)
- 設立
- 昭和25年 8月2日
- 従業員
- 233名
- 事業内容
- ・自動車整備用工具、その他一般作業用工具及びそれらに関連する機器の製造販売 ・精密工作機械部品、産業用機械部品などの製造販売 ・DIY商品の販売、不動産の賃貸
- URL
- https://ktc.co.jp/