トピックス
ユーザーを訪ねて
2020年7月号のユーザーを訪ねて
工作機械、自動車、航空機、電子、電力、食品加工設備など様々な業種の機械部品を製造
有限会社高橋鉄工所 様
今回のユーザーを訪ねては、東海北陸自動車道の岐阜各務原インターより車で2分程の距離にある岐阜県金属工業団地内の(有)髙橋鉄工所です。取材には、髙橋敬治社長、髙橋正光専務取締役にご対応頂きました。髙橋社長は、高校卒業後親戚の工場でアルバイトとして働きながら岐阜大学の夜間で機械工学を学ばれました。
「卒業後その会社に就職し汎用フライス、汎用旋盤など加工技術を習得しました。ここで身につけた加工技術が私の財産です。就職して10年後に得意先であった大手工作機械メーカーから独立しないかとの勧めがあり、金属工業団地内のバネ製造会社の倉庫で、廃業した会社から工作機械を購入して昭和63年7月に創業しました」と創業当時を語る髙橋社長。
髙橋専務は髙橋社長のご子息で、地元の工業高校を卒業し大手電子部品メーカーに就職。半導体製造装置のCAD図面変更の業務を3年経験して、同社に入社されました。
「最初は抵抗もあり、全く入社する気持ちはありませんでした。しかし、頑張っている父を助けたいと入社しました」と髙橋専務。
一社依存からの脱却
「創業当時から独立を勧めてくれた大手工作機械メーカーの仕事のみで業務を行っていました。その為、営業活動は一切せず、その会社に訪問することはありませんでした。担当者が代わり、仕事の内容が変化しましたが、全然気がつかずにいました。利益が少ない部品が多くなり、それでようやく気づきました。これではいけないと他社への営業活動を行い、電子部品メーカーと出会いました。その会社はワイヤーハーネス加工機の組み立てを行っており、その機械部品加工を請け負いました。信頼を得て多くの加工部品を納入することになり、当社の7割を占めるようになりました。しかし、景気が落ち込むと受注が減り、再度一社依存の危険性を実感し、様々な業種の仕事をするように経営方針を変更しています」と髙橋社長。
お客様の困りごとを解決
同社は、現在多種多様な業種の部品加工を行っています。月産4,000個の部品もあれば、1個しかない部品もあるとのことです。
「当社の特長は、他社ではやれない、困ったものを普通に加工することです。例えば、X軸ストロークが1mしかない機械で3mの部品加工をしたこともあります。これは、汎用機を使っていた経験が生かされました。何時も心がけているのは、お客様が喜んでくれる仕事をしないといけないということです。お客様の言葉の中に当社の真実があります。お客様が当社の加工品を見て、綺麗な仕上がりと言って頂いた。そこに当社の特長があると気づき、製品にキズをつけないようにと現場で指導しています。この様にお客様の声に対応し続けていると仕事の内容が変わっていきました。10年前と現在では仕事の質が大きく変わっています」と髙橋社長。
「お客様が困っていることを解決できる会社との評判が広がり、他社の営業が仕事を紹介してくれることもあります」と髙橋専務。
立形マシニングセンタVX-1000導入
「名古屋の展示会でマツウラのブースでハイブリッド金属3Dプリンタを見ました。それまでマツウラのことはあまり知りませんでしたが、すごい機械を作るメーカーとの印象を受けました。それからマツウラの営業が来られ会社や機械について知ることになりました」と髙橋社長。
「5軸加工機の導入を検討していましたが、既存のマシニングセンタが故障したので3軸機の導入を検討していました。当初マツウラの中古機を導入しようか迷っていましたが、将来性を考え立形マシニングセンタVX-1000を平成29年12月に導入しました」と髙橋専務。
5軸制御立形マシニングセンタMX-330 PC10導入
「別メーカーの3軸マシニングセンタに付加軸を付けた5軸加工機を使っていたので、5軸加工機の良さは分かっていました。当社は様々な材料も加工するので、5軸加工機でアルミ材もやりたい、鉄もやりたいと思っても1台では段取り替えに時間がかかる。2台あれば、その対応が可能になる、更にパレットがあれば別の仕事を同時並行で加工できると考え、10パレット装備のMX-330 PC10を平成31年3月に導入しました」と髙橋専務。
「これから先は、5軸加工機は絶対に必要になると思っています。私が仕事を始めた時は、殆どが汎用機で、100軒中1軒にマシニングセンタ、50軒中1軒にNC旋盤でしたが、今は一人でやっている会社でもマシニングセンタやNC旋盤で仕事をしている。それと同様にどこの会社でも5軸加工機がある時代になっていくと思います。5軸加工機の導入はCAD/CAMも含めて現場の技術レベルが上がります。また差別化が出来るので他社との優位性を出せます。MX-330 PC10 の導入により、加工方法や考え方も変わっていきました。その考え方が3軸加工機にもフィードバックされ、当社の加工方法が大きく変わったと実感しています」と髙橋社長。
アルペンスノーボード向けバインディングを製作
取材中に髙橋専務より、同社が所属する岐阜県金属工業団地協同組合が発行する金属団地ニュースNO,537より同社の記事を紹介されました。「アルペンスノーボード向けバインディング 一般販売開始(有)髙橋鉄工所」との見出しがありました。
「スノーボード用品を輸入販売している友人の依頼で“アルペンスノーボード向けのバインディング”を開発して自社ブランドで販売したいとの依頼がありました。5軸マシニングの導入を機に技術力が向上し、作れなかった部品は作れるようになり、改良とテストを重ねて完成度が高まりました。さらに横浜で開かれたウィンタースポーツ用品の展示会に出展するなど販売に向けた活動も行い、今年になってようやく商品として世に出せるレベルに到達しました」と記載されています。
「普段の部品加工では、その部品が最終的に何処に使われるかわからないものが多いですが、自分が作ったものが直接エンドユーザーの手元に届く製品になるのは嬉しいです」と髙橋専務。
次世代へのバトンタッチ
「5軸機を導入した時点で社長交代しようと思っていたが、まだ早いと言われました。しかし、来年には社長職を専務に渡すつもりです」と髙橋社長。
「仕事の形態はどんどん変わって行きますが、10年後も“ 困った時には髙橋鉄工所に頼めば対応してくれる”との企業ブランドは継続していきたいです」と抱負を語る髙橋専務でした。
工業団地には様々な業界企業47社が稼働しており、他社の状況を見ても活気あふれる工業団地との印象を受けた取材でした。
会社情報
- 会社名
- 有限会社高橋鉄工所 様
- 本社
- 岐阜県各務原市金属団地64番地
- TEL
- 058-371-5602
- FAX
- 058-371-5340
- 役員
- 代表取締役 髙橋 敬治
- 創業
- 昭和63年7月
- 従業員
- 10名
- 事業内容
- 各種機械部品製造