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ユーザーを訪ねて

号のユーザーを訪ねて

No.156

製品カテゴリ:MX-520

山間深く自然環境の恵まれた郡上八幡で最先端の航空宇宙、医療部品加工に挑戦する

株式会社郡上螺子 様

 今回のユーザーを訪ねては、東海北陸自動車道の郡上八幡インターから車で北東へ15分ほどの株式会社郡上螺子(ぐじょうらし)を取材しました。取材には髙瀨晴夫社長と髙瀨康史取締役第二工場長にご対応頂きました。郡上八幡市は、8月のお盆の四日間徹夜で行なわれる“郡上おどり”で有名ですが、普段は山間と吉田川という清流が流れる静かな町並みです。同社の前に”せせらぎ街道”(国道472号)が走り、直ぐ横に吉田川が流れている、豊かな自然に囲まれた環境です。

 髙瀨社長のお父様が昭和43年に創業、会社名の螺子(らし)はネジとも呼びます。その名が示す通り、愛知県にある大手ネジメーカの委託を受け自宅倉庫にてネジ加工業を開始しました。「当時この周辺の産業は農業と林業しかなく、安定した現金収入がありませんでした。父は、これを改善したいと考え、この業界に入りました。親戚や近隣の方に声をかけて郡上会を立ち上げたのが始まりです。また、私は郵便局に勤めており、家業を継ぐことを考えていませんでした。父が高齢になり、この仕事のおかげで今日の自分があるとの思いと、後継者問題でお取引先様にもご迷惑をかけられないと考え、45歳でこの会社に入ることを決心し、48歳で経営を任せられることとなりました」と髙瀨社長。会社のマークは、円弧が二つ重なっています。ネジをイメージし、ブルーは郷土に感謝の気持ちも込め『清流吉田川』の川の流れと清らかな風、渦巻く形で郡上螺子の未来にかけるエネルギーを表現しています。

第二工場建設

 髙瀨社長には二人のご子息がおられ、現在次男が第一工場工場長、また長男が第二工場長を勤めています。第一工場はネジ加工中心で、第二工場はマシニングセンタによる部品加工を行っています。「学校も工業系でなかったことや、弟もいるので、継ぐことはあまり考えていませんでした。しかし、社長が体調を崩したこともあり、親孝行のつもりで入社しました。その後弟が大学を卒業して入社したのを契機にもっと世間を知りたいと思い一時家を離れました。しかし創業者の祖父から頻繁に電話があり戻る事にしました。それ以後必死に働いています」と髙瀨工場長。「二人の息子がそれぞれに可能性を追求し、力を発揮し合うことでさらに力が得られると考え、平成20年に第二工場(マシニング加工)の建設を機に、長男を第二工場長、次男を第一工場長として任せました」と髙瀨社長。

航空・宇宙産業へ進出

 取引先は、航空・宇宙関連の事業も展開していたので、同社へもその分野の加工依頼が入るようになりました。以前は自動車部品のネジ加工を専門に行ってきましたが、平成13年に航空機部品のネジ加工を開始。平成20年にネジ加工以外のフライス加工を含む航空機部品を手掛けることとなり、立形と横形のマシニングセンタを導入。また同時に第二工場を建設して専用工場としました。髙瀨工場長は、取引先で研修を受けマシニングセンタに関する知識を学び、責任者として航空・宇宙部門を立ち上げました。

「将来、社員が増えた時に、全ての業務に精通していないとマネジメントできないと思い、マシニングの操作、3次元測定器、CAD/CAM操作によるプログラム作成と孤軍奮闘でした。取引先から加工プログラムの支給の御厚意を頂いた事もありましたが、それを受けては技術力が残らないと考えあえてお断りしました。初期の立ち上げは全てを自分で行なうと決心、今に至っています」「また、航空機部品の原図面はインチサイズであり、またコメントも英語標記です。CAD/CAMでインチサイズをミリに変換して加工します。コメントの英語に関しては、会社を出た時にアメリカで生活していたので英語に関して苦痛はなく、様々な経験が無駄でなかったと感じています」と髙瀨工場長。

5軸制御立形マシニングセンタ「MX-520」導入

 同社には3軸と4軸のマシニングセンタは設備されていましたが、5軸のマシニングセンタは有りませんでした。航空機部品の様々な加工を行う中で、どうしても5軸加工が必要になってきました。取引先が、マツウラの5軸制御立形マシニングセンタ「MAM72-25V」を設備していたので、同等レベルの品質を確保できると考え、平成23年12月にマツウラの「MX-520」を導入しました。「初めての5軸加工機であり、当初は仕事も殆どありませんでした。しかし、取引先に、大手企業から5軸の難しい加工の依頼が入り、当社で出来ないかとの打診がありました。何事も挑戦と思い、この仕事を引き受けました。確かに複雑な5軸加工でありましたが、MX-520を駆使して完成させ、無事納品が出来ました。このことをきっかけにご依頼先の企業から信頼も頂き、わざわざ郡上の地まで度々ご訪問いただきました。この仕事を通じて当社の技術力に自信を持てるようになりました」と髙瀨工場長。

医療分野メディカル事業への参入

 取引先は、新規事業として医療分野に進出。医療分野の製品はチタン材が多く、同社も自動車、航空・宇宙部品のチタン材加工の技術を生かし、医療分野の製品を手掛けることになりました。ある時、取引先から、5軸加工が必要な医療部品の依頼がありました。しかし、既設のMX-5201台では航空機部品とのバッティングで要求納期での対応が困難でした。その解決策として今年3月に2台目のMX-520を設備し、本格的に医療分野への進出となりました。取材した時にも、骨に取り付けるチタンプレートを1枚のプレートから削り出しで加工していました。「切削している機械のガードを無意識に触って振動を拾っているのですが、他マシニングセンタと比べるとMX-520は機械本体や主軸がしっかり作られていると体感します」と髙瀨工場長。

斬新なホームページ

 同社のホームページにアクセスすると、画面に郡上八幡の自然豊かな情景が現れ、加工工場のホームページなのかと戸惑います。このホームページは高瀬工場長が知人に依頼し作成したものです。「ホームページを作るとき、通常であれば仕事の受注目的で作成しますが、新規取引先獲得の為ではなく、人材採用に重点を置き、若い人材が入社したいと思えるようなホームページをコンセプトに作りしました」と高瀬工場長。「二人の工場長が全業務を把握し早い対応を心がけ、お客様からの信頼を得ています。これらの信頼を基に新たな挑戦をすることで技術力を高めることが出来、現在に至っています。今後、業務に幅を持たせるため、さらに組織を強化していく大切な時期になっています」と高瀬社長。

 取引先が新事業を展開するのにあわせて、同社も業態を変化させて現在では最先端の航空・宇宙、また医療分野まで広げています。生産コストを求めて取引先を変える会社もある中で、取引先と同社との長年の信頼の厚さに日本のモノづくりの強さを実感しました。

会社情報

会社名
株式会社郡上螺子 様
本社
〒501-4201 岐阜県郡上八幡市有穂1530-1
TEL
0575-62-2230(第一工場)
0575-62-2088(第二工場)
FAX
0575-62-2314(第一工場)
0575-62-2096(第二工場)
代表者
代表取締役 髙瀨晴夫
創業
昭和43年12月
設立
昭和62年4月
従業員
25名
事業内容
航空・宇宙、自動車、医療産業の部品加工
URL
http://www.gujorashi.com/

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