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ユーザーを訪ねて

2024年新春号のユーザーを訪ねて

No.196

製品カテゴリ:MX SeriesMX-420 PC10

大企業と中小企業の「狭間」を狙う柔軟性

株式会社 日昇テクニカ 様

 

今回のユーザーを訪ねては名神高速道路の彦根ICから車で5分の距離にある、株式会社日昇テクニカです。同社では半導体製造に欠かせない光学機器部品や、自動車のワイヤーハーネス検査機器などを主力として、様々な分野に向けた金属・樹脂の加工を手掛けています。従業員数25名の少数精鋭でありながら、設計から製造・組立・検査まで一気通貫で対応できる柔軟性を武器に、多様化する顧客ニーズに対応してきました。「いいモノを、納期厳守で削る。」というスローガンは同社のモノづくりの精神を端的に表しています。

取材には一圓直基 代表取締役社長にご対応頂きました。一圓社長は2003年に同社に入社、2019年に現職に就任されました。現在に至る経緯について伺ったところ、入社に際してはとある「事件」があったとのことです。「当社は私の父が創業した企業で、私も高校生くらいの頃から漠然と家業を継ぐことを意識していました。そのため、大学でも経営学を専攻しましたが、当時父からは『お前はお前の人生であり、自社への入社は全く考えていない』と言われていました。そのため氷河期真っ只中の就職活動を経て、2社から内定を頂きました。うち1社に入社を決めたことで残りの学生生活を謳歌していたのですが、卒業直前に『事件』が起きました。内定先への入社を直前に控えた3月中旬、入社予定だった企業に父が勝手に内定辞退の連絡を入れたのです。またそれだけでなく、4月から専門学校への入学を半ば強制的に決めていました。この時は言葉にできないほどの衝撃を受けましたが、卒業後の進路が断たれた以上、専門学校に入学するより選択肢はありませんでした。専門学校で約1年間、旋盤やマシニング加工、プログラミングの基礎などを学んだ後、当社に入社しました。結果的に父の敷いたレールに乗せられた形ではありますが、図面の読み方すら理解していなかった当時を振り返ると、家業を継ぐうえで必要なプロセスであったのだと思います。」と一圓社長。

退職金替わりの旋盤

「私の入社経緯もそのひとつですが、父には尖ったエピソードがいくつかあります。」と語る一圓社長。創業当時についてもお話を伺いました。「父は元々、名古屋の大手陶磁器メーカーに勤務していましたが、体調を崩したことをきっかけに地元の滋賀に戻りました。当初は従業員5 ~6名の旋盤加工の会社に勤めましたが、職人気質で他人の下に付くことが性に合わなかったようで、後に独立し1977年に当社を創業しました。独立の際にも『退職金は要らないので目の前のコレ(旋盤)が欲しい』と、当時の勤務先から旋盤を譲り受け、それを実家の小屋に置いて事業をスタートさせました。創業当時から、現在も主力である半導体関係を中心に金属や樹脂の加工を手掛けていたそうです。」と一圓社長。

お客様との約束は絶対

「当社では、製造業の要とも言えるQuality(品質)・Cost(コスト)・Delivery(納期)のうち、特に品質と納期を死守しています。その分、コストは相応に高くなる点をお客様にはご理解頂いています。」とご自身の信念を語る一圓社長。それを象徴するエピソードがあります。「とある製品で、当社の設備トラブルのため納期に間に合わない恐れが生じました。何とか間に合わせるため、完成後すぐ製品を持って飛行機に飛び乗り、滋賀から岩手のお客様まで、私自身が製品を手渡しに伺ったこともあります。価格にして15,000円ほどの製品であったためお客様は大変驚かれましたが、お約束した納期は絶対です。信頼を崩すのは一瞬ですが、一度崩した信頼を取り戻すことは困難です。今日まで積み上げてきたお客様からの信頼は、このような姿勢に下支えされているように思います。」と一圓社長。

1ヶ月足らずで軌道に乗った

創業以来、積極的な設備投資に取り組んでいる同社では、NC旋盤やレーザー加工機など様々な設備機を有しています。なかでも主力であるマシニングセンタは現在20台が稼働しており、その内の一台が2023年3月に設備した5軸制御立形マシニングセンタMX-420 PC10 です。同社にとって初のマツウラ機、そして初の5軸機の設備に至った経緯を伺いました。「当社では私の入社以前から、立形を中心に複数のマシニングセンタを設備してきました。新たに5軸機を検討した目的は『効率化』に尽きます。若者の新規雇用は年々困難になり、また近年の物価高も拍車をかける形で、効率化は大きな課題でした。そんな中、割り出し5軸加工による工程集約に魅力を感じるようになりました。段取りの効率化は工数削減と同時に精度の向上にも繋がります。マツウラ機の設備を後押ししたのは性能に対してリーズナブルな価格と、ファナック製NCの存在です。既存の立形機でもファナック製NC搭載機を使用していたため、現行の加工プログラムを上手く応用すれば、割り出し加工にもスムーズに対応できるのでは、と考えたのです。結果的に狙いは当たり、設備から1 ヶ月足らずで軌道に乗 せることが出来ました。担当してくれているマツウラの営業マンも『ひと月でここまで稼働している例は珍しい』と驚かれる程です。」と一圓社長。

3面イケール活用による工程集約

MX-420 PC10 は立ち上げ当初から効率化に貢献している、と語る一圓社長。現状の活用方法についても伺いました。「鉄やアルミ、樹脂など幅広く加工していますが、直近ではSK材をはじめとする工具鋼の加工ニーズが高まっています。これら当社の中では比較的量産性の高いワークですが、3軸機では治具を用いた斜め加工が必要であったため、5面同時加工による工程集約の恩恵は特に大きかったです。当該ワークの加工にはバイスを3点搭載したイケールを用いています。現状は10パレットのうち5パレットにこの3面イケールを載せています。将来的に受注が増加した際にも、10パレットすべてに3面イケールを載せれば十分対応できるでしょう。また現在は複合旋盤で加工している丸物加工についても、スクロールチャックを使用しMX-420 PC10 で対応できないかとも考えています。5軸機の導入により効率化の可能性は各段に広がりました。」と一圓社長。

柔軟性が活きる『狭間の領域』

取材の最後に今後の展望を伺いました。「当社の強みはフレキシブルに動けて小回りが利く事です。小規模ゆえの柔軟性を活かせる領域とは何か、と常に考えていますが『大企業ではあえてやらない、中小企業では出来ない、ちょうど狭間の領域』を担うことがひとつの答えではないでしょうか。大企業では豊富な資金力があるにもかかわらず採算が合わず避けるような、かつ中小企業では技術やリソース不足から手に負えない、そのようなニッチなニーズを積極的に取り込んでいけば、業界の中でも唯一無二の存在になれると考えています。」と一圓社長。


「当社では兼ねてよりIT化を進めてきました。主なところでは徹底的に現場目線でカスタマイズした生産管理システムなどが挙げられます。また従業員の平均年齢の若さも特徴的です。36 ~7歳が中心で、現在43歳の私が平均値を引き上げているようなものです。当社の強みである柔軟性を活かすうえで『IT』と『若さ』は大きな武器になっています。」と一圓社長。インタビューと工場風景の動画は、記載のQRコードを読み取りご視聴頂くことができます。 また、当社ホームページでも公開中です。ぜひご覧ください。

会社情報

会社名
株式会社 日昇テクニカ 様
本社
〒522-0025 滋賀県彦根市野田山町718番地-14
TEL
0749-23-8886
FAX
0749-23-0837
代表者
代表取締役社長 一圓 直基
創業
1977年
従業員数
25名
事業内容
光学機器部品、ワイヤーハーネスチェッカー、 医療機器部品、油圧機械部品、精密機械部品などの製造

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