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ユーザーを訪ねて
2025年春号のユーザーを訪ねて
多数個取りの活用で小ロット多品種生産を実現
しののめテック株式会社 様
今回のユーザーを訪ねては、近鉄南大阪線川内松原駅から徒歩15分の距離にあるしののめテック株式会社です。取材には、代表取締役社長を務める井宮洋様と市政沙椰主任に対応頂きました。
井宮社長は前職で金属部品を取り扱う商社で営業職を経験し、2013年10月に大阪府羽曳野市恵我之荘にて同社を創業。創業当初は社内に生産設備を持たず、協力工場に加工を依頼する形で事業を展開していました。
同社にとって転機になったのは2016年に初めて社内に加工設備を導入したことです。それまではすべて外注加工を委託していましたが、より迅速かつ柔軟に対応するため、小型のロボドリルを設備。これにより、簡単な加工であれば社内で対応できるようになり、試作や小ロットの注文にも対応しやすくなりました。また、実際に加工を行うことで技術の理解が深まり、協力工場とのやり取りもスムーズになりました。
その後、事業の拡大に伴い、社員の増員と加工設備を充実させていきました。現在では、社内加工の比率が約2割、協力工場への依頼が約8割という形でバランスを取っています。特に社内ではアルミ加工を中心に行い、高精度な加工技術を磨いてきました。社内での対応範囲を広げることで、より高度な品質管理が可能となり、顧客からの信頼も高まっています。
社名「しののめテック」の由来
社名の「しののめ」は夜明けの空が東方から徐々に明るんでゆく頃の雲を指す「東雲」に由来しています。社名について井宮社長は次のように話します。
「私はバスケットボールなどスポーツが好きで、トレーニングを夜明け前の暗い時間から行うことが多くあり、太陽が昇り始めて茜色に染まる東雲の美しい景色が見られると今日1日良いことが起きるような気持ちになっていました。これから太陽が昇り始めるという心が高鳴る瞬間も相まって東雲は好きな言葉です。」
しののめテックの強み
同社の持つ強みは柔軟さです。同社では産業機械や食品機械、計測器、産業用ロボット部品など様々な業界の部品加工を行っています。
「お客様より依頼を受けた際、あまり断ることはなく、前向きに何でもやってみるという姿勢で事業を行っています。社内で対応できることであれば、小ロットで多品種、短納期対応を提供できることが当社の強みです。社内ではアルミ加工に特化しており、アルミ以外の加工品についても、数十社の工場と協力してアルミと同等の品質・コスト・納期を実現することができています。当社はあらゆる産業機器メーカー様のベストパートナーを目指しています。」と井宮社長。
MX-330 PC10 設備
同社のマツウラ機導入はMX-330 PC10(2023年設備)となります。同機種を導入するに至った経緯について井宮社長は次のように話します。
「マツウラのことはMAM72 シリーズで以前から知っていたのですが、他の機種については知りませんでした。購入のきっかけはJIMTOF2022のマツウラブースへ立ち寄った際で、モデルチェンジされたばかりのMX-330 PC10 が展示されているのを見て即決しました。購入の決め手としては機体が手頃なサイズ感で、自動運転も安心して任せられるという点です。当時はコロナ禍ということもあり、人材採用について不安に感じていました。金属加工の熟練者を採用することは今後ますます困難になると思っています。同機種であれば、未経験の方をオペレーターとして採用しても簡単に無人運転を行うことができることを期待して購入に至りました。」
続いて、MX-330 PC10 設備後の活用方法について、「MX-330 PC10 の稼動時間は、1日あたり18時間程度でそのうち5時間程度を夜間に無人運転を行っています。MX-330 PC10 の設備により複数の工程を1工程に集約できただけでなく、多面イケールを活用して多数個取りの加工を行い、品質安定と生産性向上を実現することができました。また、オプションで予備パレットを複数枚用意しているので、一度段取りをした治具はパレットから外さずに保管しておくことができます。必要になった時にはすぐに機械にパレットを載せて加工できるので、多種品目にも対応可能です。」と井宮社長。
MX-330 PC10オペレーター市政主任
現在MX-330 PC10 を主に扱う市政主任に同機種の使い心地などについて伺いました。
「従来FANUC社のロボドリルを操作しており、MX-330 PC10 が初めて扱う5軸機でした。導入当初は扱うことに対して不安を感じていましたが、MX-330 PC10のNC装置もFANUC社製で操作感に対して戸惑うことなく操作することができました。5軸加工に関しては、マツウラのアプリケーションサポートやカスタマーサポートに都度問い合わせることで解決することができ、手厚くサポートしてもらっています。今ではMX-330 PC10 を扱うことを楽しく感じる程、この機種の使い易さを実感しています。」
「オペレーターとしてMX-330 PC10 の良さを実感している点は3点あります。1点目は剛性の高さです。加工精度が安定しているだけではなく、加工条件をさらに高く設定することもできます。2点目はワークとオペレーターの接近性の良さです。安全ドアからワークまでの距離が短い為、機内の工具とベースやワークの干渉を目視で確認し易いことや段取りを行う際の作業性が高いです。安全ドアの窓から覗くと自分の数十cm先で躍動感あふれる様子で主軸が高速回転しワークを削る姿を目の当たりにできます。3点目は工程集約と不良率の低下です。MX-330 PC10 導入前までは加工面1面ごとに加工プログラムを作成し、座標原点を変えて加工していたため、複雑な図面の際に素材の取り付けミスが発生したことがありました。MX-330 PC10 ではワンチャッキングで加工できることにより、工程集約による効率の向上の他、取り付けミスがなくなることで不良率の低下にも繋がりました。」
また、同社に設備されているMX-330 PC10 は東雲を連想させるような茜色となっており、これは市政主任が選択したとのことです。
今後の展望
「今後は日本全国のお客様から業界問わず様々な受注を頂ければ、と考えています。その為にも引き続き設備増強を図り、幅広い受注に応えられる環境を整えていきます。設備増強を行うには現状の社屋が手狭になる為、将来的には新社屋に変えてMAM シリーズなどの導入も検討したいと思います。」
「弊社は開発段階からどうしたら品質の安定が図られるか、コストが抑えられるかなどのご提案や試作品の製作、量産化後の安定した部品供給までを一貫して行っておりますので、モノづくりにおいてご用命がありましたらお気軽にしののめテックまでお問い合わせください。」と井宮社長。
取材を通じて、同社の社員の皆さんが生き生きと働かれている姿が強く印象に残りました。同社では全社員数17名のうち10名が女性で、なおかつ製造職に就く11名のうち9名が女性です。一般的に製造業における女性従業員の比率は男性よりも低くなりがちですが、同社の残業ゼロの働き方や一体感のある職場づくりなどが皆さんの働きやすさに繋がっているものと思います。
社名の「しののめ」が表す通り、同社のこれからの発展が期待されます。
会社情報
- 会社名
- しののめテック株式会社 様
- 本社
- 〒580-0004 大阪府松原市西野々1丁目9-20
TEL: 072-370-1094 - 代表者
- 代表取締役社長 井宮 洋
- 創業
- 2013年10月25日
- 従業員数
- 17名
- 事業内容
- 医療機器部品、自動車部品、半導体関連機器装置部品、OA機器部品(プリンター、複写機など)、建設機械部品、油圧機器関連部品の製造