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ユーザーを訪ねて
2016年10月号のユーザーを訪ねて
No.167
製品カテゴリ:MAM72-35V
名古屋で40年以上一貫して航空機関連部品製作に取り組む
株式会社磯村製作所 様
今回のユーザーを訪ねては、名古屋駅から車で北へ15分 ほどの株式会社磯村製作所を取材いたしました。取材には磯 村元威社長にご対応頂きました。同社は、お父様が昭和30 年に機械加工と鋳物製作で創業しました。昭和47年にお父 様が他界され、お母様が社長に就任、その後平成3年に磯村 氏が社長に就任されました。磯村社長は三代目となります。
「遅くまで、また休みなく仕事をしている父の姿を見て、 大変な仕事なので継ぐつもりはありませんでした。しかし、 父が他界し一人で頑張る母を見て大学を辞め継ぐ決意をし ました」と磯村社長。
航空機産業への参入
「父の戦友が、名古屋の大手重工業の工場長であったこと を縁に、昭和48年からその企業の油圧部品製作を行っていました。その企業は航空機部品製作も行っていましたが当 初は航空の仕事はありませんでした。昭和55年から航空機 部品の仕事を請けましたが、最初はチタン材の切断でした。 航空機に新素材としてチタン材が採用されましたが、加工 用に切断が必要だったのです。当初はレーザーで溶断して いましたが、歩留まりが悪く他の方法を模索されていまし た。切断機を設備していた当社に依頼があり、切断機メー カーと協力して条件などを模索して可能にしました。この業務でもチタン材だけでなく、様々な切断の依頼も受けま した。例えば筑波の高エネルギー研究所に設置された電子 ビームの発信装置をカットしたこともあります。しかし、 当社の本業は部品製作なので、切断業務から徐々に部品製 作へ移行していきました。このように、取引先からの依頼 に誠実に対応することで長年の信頼を得ていきました」と 磯村社長。
大手電気メーカーとの取引開始
「大手重工業から大手電気メーカーの仕事を紹介されました。その電気メーカーは、新幹線のレールを走行中に検査 する装置を開発しており、試験用のレールに人工的に傷を 付けたり、穴をあける必要がありました。その加工依頼を当社は受けました。また、その電気メーカーの担当者が移 籍した会社が樹脂加工をしている会社で、そこからも新規 業務を受けました。その業務は、テフロン樹脂を加工するもので、航空機の部品加工で削り出し加工を経験していたので、難なく加工出来ました。しかし、深い穴加工が何度 加工しても穴径が大きくなり失敗しました。当社にはガンドリルでの深穴加工の経験があったので、ガンドリルメー カーと協力して形状や加工条件を模索して可能にしました。 このように当社は、航空機部品の加工を縁にして、様々な方面に事業を展開していきました」と磯村社長。
後継の育成
「長男は大学卒業後、一度他社で働きましたが、1年半後 に入社しました。私が取引先の大手重工業の協力会の役員 をしていたので、担当の部長に長男の教育について相談し たところ、1年間その企業でお世話になることになりました。 このような形で研修を受けいれることは初めてのことだそうです。様々な業務を研修させて頂きました。現在営業としてその会社に行くと、研修のお陰で回りの方々が声をかけて下さいます」。
「次男も大学を卒業し進路の相談をしたところ、長男と同じ会社に研修に行きたいとのことでしたが、2人は無理な ので別会社で研修を検討しました。次男は工学部を卒業し ており、加工プログラムを学びたいと言うので3次元CAD のCATIAを使っている会社で研修を受けました。航空機の 部品を製作する上で、3次元CADが使えないと仕事が出来 ない状況なので、次男の研修は、その後の当社にとって大 きな戦力になりました。長男が営業担当、次男が技術担当 として当社を支えており、後継が育っていることに研修を受け入れてくれた会社に感謝しています」と磯村社長。
5軸制御立形マシニングセンタMAM72-35Vを設備
同社の最初のNC機は、昭和45年の横形マシニングセン タです。まだ日本でマシニングセンタが初期のころです。 また5軸マシニングセンタも早く設備するなど、同社は常に最先端機を設備しています。
「更なる生産性を求められ長時間無人運転できるマシニングセンタの検討が必要になりました。そこで、技術担当の 次男を責任者として検討し、マツウラのMAM72-35Vを平成24年に設備しました。機械を使う上で一番大事な接近性の良さが決めてとなりました。また40パレットで夜間無人運転可能なことは、当社が求めるコンセプトに合致し ていました」。
「航空機部品でも当社が加工するワークの7割がφ350mmに入ります。これはMAM72-35Vの加工範囲です。仕事が更に増え、機械増設が必要になり、平成26年6月にMAM72-35Vを追加設備しました。航空機部品と言えば大型をイメージしますが、当社は小物部品に特化していくつもりです。このクラスの加工では他社参入が容易なために、当社としては徹底してQCD(品質、コスト、納期)で差別化しています。一番求められるのがコストですが、 MAM72-35Vで十分対応できます」と磯村社長。
人材育成が企業の競争力
「国産ジェット旅客機MRJは現在月産1機ですが、2020年には月産10機に増やしていく計画と聞いています。3 年 の 内 に 当 社 と し て も 対 応 が 必 要 で す。MAM72-35Vは十分対応出来ますが、他の機械で加工している部品の対応が課題です。夜勤で対応するか、また機械を増設するか早期に判断を求められています。機械はお金で解決できますが、一番の課題は人材です。採用は常時募集していますが、直ぐには技術者として育ちません。担当者が工程設計や加工プログラムが作れる能力があるかどうかで、その機械のQCDが決まってしま います。正に人材の能力の高さで企業の競争力が決まる時代です。当社では、様々な経験を通して優秀な人材を育成しています」と磯村社長。
航空機部品製作の将来
日本は国家戦略として航空機関連産業の育成を進めてい ます。中部地域と自治体と関連企業で「アジアNo.1航空宇宙産業クラスター形成特区」としてボーイング787やMRJの生産拠点の地位を確立しようとしており、同社も参加しています。
「今、航空機産業への参入が盛んです。生産量が増えて生産を海外で行えばコストを下げられますが、品質の面でまだ課題があります。国内の生産でもコストを抑えられれば、品質・納期では十分対応できます。しかし、1社だけで対 応すると限界があるので、複数の企業でクラスターを形成して一括受注を行えば対応が可能です。航空機部品製作は今後日本各地で展開されると思います」と磯村社長。
同社は、40年以上にわたり大手重工業と直接取引を継続されています。それは簡単にできることではありません。 担当者が代わっても困っているときに誠実に対応してきたことが、現在に繋がっていると感じた取材でした。
会社情報
- 会社名
- 株式会社磯村製作所 様
- 本社
- 〒452-0837 愛知県名古屋市西区十方町6番地
- TEL
- 052-501-8826
- FAX
- 052-501-7164
- 代表者
- 代表取締役 磯村 元威
- 創立
- 昭和30年
- 設立
- 昭和55年
- 従業員
- 30名
- 事業内容
- 航空宇宙の機体部品とエンジン部品の部品製作
- URL
- http://www.k-isomura.co.jp/