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ユーザーを訪ねて

号のユーザーを訪ねて

No.147

製品カテゴリ:MX-520

半導体、液晶装置の製造から精密機器、省力化機械の設計製造でイノベーションを形にする

株式会社吉本製作所 様

 今回のユーザーを訪ねては、JR青梅線の小作駅から車で北に10分ほどにある株式会社吉本製作所を取材しました。
取材には吉本誠社長に対応頂きました。創業は吉本功会長で吉本社長は2代目となります。青梅地域は織物産業が過去には盛んでありました。その後繊維産業が衰退し、その工場跡地に新しい産業の企業が進出。それらの企業への精密部品の製作から組立てまでを手がけてきました。吉本社長の経歴は大学の文学部を卒業後、会計や販売管理のパッケージソフトを販売する会社に就職し、お客様のアドバイザーの職にありました。「その会社では、ソフトを購入された中小企業の経営者や担当者にアドバスしながら中小企業の経営について理解を深めました。経営の大変さ、また楽しみも感じ、いよいよ自分も経営をやらなくてはと思い、3年半で当社に入社しました」と吉本社長。

10年サイクルで主力取引先が変わる

 青梅市は、近郊の八王子市などに、大手企業の工場が多数あり、また高速道路整備により関東エリアとの企業とも短時間での往来が可能な町です。「創業当初はガスバーナーの部品加工を主体としていました。その後1980年から90年代は分析装置メーカーの仕事を多く行なっていました。そして2000年に入り半導体、液晶装置メーカーとの取引が増え、10年毎に大きく取引先が変わっています。しかし、こらから10年先はまだ見えていない状況です」と吉本社長。このように様々な産業の部品加工に対応するために多数の生産設備を導入しています。横形マシニングセンタ3台(多面パレット装備2台)、立形マシニングセンタ7台、NC旋盤5台、ワイヤカット2台、放電加工機1台、研磨機2台、CAD/CAM3台、そして3次元測定機3台を有し、お客様の要望に応えられる体制を取っています。その時代で最良の機械を導入するとの吉本会長の方針で各機械メーカーから設備しています。平成3 年にマツウラの立形マシニングセンタ「MC-600V」、引き続き「MC-600VF」、そしてCAD/CAMシステム「GibbsCAM」も3台も導入されました。

社長就任後に工場を集約

 吉本社長は入社後、現場で様々な機械を経験し平成18年に社長に就任されました。「当時第一工場と第二工場の二つの工場で生産を行なっていました。売り上げが上がるのに利益が上がらない。工場が分散していることで効率が悪いと判断し、平成19年に本社及び全ての設備を第二工場に集約し工場内のレイアウトも大きく変更しました。工程が工場間で跨っていたものがひとつの工場で行なえるために時間短縮が図られ、また一人で複数台を担当することで適切な人員配置が可能となりました。当時周囲の人々からは、先代の資産の売却に避難の声もありましたが、工場は減るも売り上げは伸ばすことができ、判断は間違っていなかったと確信しています」と吉本社長の言葉です。

5軸マシニングセンタ3台を導入

 平成2 2 年1 1 月に5 軸制御立形マシニングセンタ「MX-520」を3台同時に設備されました。「リーマンショック以後、仕事先から注文が出ない、また出ても納期が厳しい状況でした。今まであった10個、20個の仕事が減り、多品種少量生産を要求されました。また短納期への対応も迫られ平均リードタイムは平均2週間以内です。時には2 , 3 日納期の仕事もあります。これらの解決策としてMX-520の同時3台導入を決めました」と吉本社長。工場内には各メーカーの機械が違った仕様で設備されています。多品種少量生産なので、ぎりぎりにならないと加工機械が決まらないので事前にプログラムも作れません。もし前準備でプログラムを作ったとしても機械仕様が異なるために切削条件は回転数、送り速度の低い機械に合わせるなど、大変効率が悪い状況でした。「当社では5軸加工の必要性はありませんでした。一般的には3軸加工が主流で、4軸加工が多少ある程度ですが、将来性を考え5軸加工機の検討をしました。また1台のみの導入では特別な機械となってしまい専門の人しか使わない機械となり生産効率が悪くなります。MX-520を3台導入し吉本製作所の標準機とすれば、プログラムや冶具などの前準備もスムーズに行え、5軸機が特別でなく汎用的な機械になると考えました。また将来5軸加工も増やしていく計画です」と吉本社長。

 3台とも円テーブルはφ500mm仕様です。円テーブル上に専用テーブルを載せバイスなどの治具を取り付けています。またIntelligent Protection System(衝突防止機能)の専用CRTをガード前面に取り付け、オペレーターはこの機能をフル活用して安心して機械操作を行なっています。

独自の工程管理システム「ルート管理システム」

 同社では、益々多品種少量生産が進み、納期短縮と納期管理が課題でした。吉本社長は以前ソフトウェア関連の会社で勤務経験もあり様々な生産管理ソフトを検討しましたが、納得出来るシステムがなく、独自の「ルート管理システム」を開発し運用しています。工場内をブロック(マシニング、大型MC,横型MC等)分けし、ブロックごとの進捗状況を管理しています。大型ディスプレイを工場内壁面に設置し、従業員が何時でも進捗状況を認識できます。表示は“入図”(受けた仕事数)、“間際”(納期が迫っている仕事数)、“超過”(納期が過ぎている仕事数)の三つで管理しています。この工程管理システムにより、余裕のあるブロックの社員が忙しいブロックを手伝うことによる納期短縮の実現と、加工の進捗状況を営業部門が常に把握できるので発注や納期などの問い合わせに的確に回答ができるようになっています。詳細工程の管理は各グループ内で行い、自主性を持たせています。「細かい工程管理は各自に任せています。朝出社して図面を渡され仕事と機械が決まることも良くあります。どんな加工でも社員は責任を持って取組んでいます。このことで社員の多能工化が進んでおり、担当者が治具から加工方法まで考える技術力を持っています」と吉本社長

自社製品の開発

 吉本会長は、創業以前は自動機の設計を担当しており、自社製品の開発という夢を持ち続けていました。分析機器メーカーの仕事で加工から組立てまでの一式を受ける仕事もあり、開発の機会を窺っていました。経営を吉本社長に継承したことを契機に本格的に自社製品の事業化を推進しました。分析業務に有効なポンプとして「多筒式ドライブピストン真空ポンプ」と「液送プランジャーポンプ」を開発し販売を開始しています。
「自社製品を持つことで、部品加工を請け負う会社からメーカーとしての誇りが社員に芽生えています。事業としてはまだまだですが、良い効果が出ています」と吉本社長。

 工場内に3台のMX-520が並んで稼動している姿は納入メーカーとして大変嬉しい光景でした。設備後に東京都に経営革新計画を提出し、「中小企業の新たな事業活動に関する法律第9条第1項の規定に基づく承認」を受けました。これにより低金利融資や税制面での支援措置の対象企業になったとのことです。同じ機種を3台同時導入の理由を聞いて、吉本社長の長期的視野に立った設備計画に説得力を感じた取材でした。

会社情報

会社名
株式会社吉本製作所 様
本社
〒198-0023 東京都青梅市今井3丁目9-17
TEL
0428-32-0177
FAX
0428-32-1271
Email
info@yoshimoto-fc.co.jp
代表者
代表取締役 吉本 誠
創業
昭和47年1月
設立
昭和52年4月
従業員
25名
事業内容
機械部品の加工から精密機器・省力化 機械の組立て・調整。自社製品の各種 ポンプ製造販売
URL
http://www.yoshimoto-fc.co.jp/

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