トピックス
ユーザーを訪ねて
2018年4月号号のユーザーを訪ねて
No.173
製品カテゴリ:LUMEX Avance-25
創業75周年と歴史ある鋳造メーカーでありながら金属3Dプリンタで新技術に挑戦する
東金属産業株式会社 様
今回のユーザーを訪ねては、JR沼津駅から東に車で約 10分の距離にある東金属産業株式会社を取材いたしまし た。取材には田中健太郎社長にご対応頂きました。同社は 昭和17年創業で創業75周年の歴史があります。田中社長 の祖父田中英行氏が東京都大田区大森で鋳造業として創業 され、田中社長は3代目となります。戦後昭和26年に沼津 工場を立ち上げ現在に至っています。
「父はバブル崩壊を経験し、私に製造業を継がせたくな いと言っていました。それで高校卒業後、東京で先輩とシ ステムエンジニアリングの会社を立ち上げ、お客様の依頼 でシステム開発を行っていました。しかし、当時東金属産 業に務めていた叔父から戻ってくるように強く要請され、 30歳で入社しました」と入社経緯を語る田中社長。
事務所前には、創業者田中英行氏の銅像があり、またロ ビーにはハイブリッド金属3Dプリンタで作られた水が流 れているモニュメントが置かれています。創業の歴史を大 事にしながら最新技術に挑戦する社風を感じました。
鋳造から加工、組立までの一貫生産
「入社時は、鋳造・製缶・機械加工・組立と各製造部門 の現場に入り、培われた技術や工夫を学びました。失敗か ら学ぶことも多々ありました。次に同じ失敗を繰り返さな い為の工夫、上手くいったときは何故上手くいったかを考 え、次に活かすようにしました。この経験が私の仕事に取 り組む姿勢となりました。」
「当社の取引先は、液晶・半導体製造装置メーカーで す。当初大型の鋳造部品製作のみでしたが、取引先からの 要望があり鋳物に部品加工を行い納品しました。次には出 来上がった部品を溶接作業で製缶部品に仕上げ、更には組 立まで行うようになりました。現在では取引先に喜んで頂 けるように一貫生産を目指しています。機械加工を行って いるが故に、鋳物の設計提案が出来ます。また組立を行い 精度調整まで行っているので、こういう構造であれば精度 確保が容易となり、価格低減が出来ますとの提案も行って います。更に様々な取引先と仕事をすることにより、異業 種で採用されている構造からヒントを得て提案に活かすこ ともあります。この様に生産力だけでなく提案力が当社の 強みです」と田中社長。
会社方針「能力があるか否かではなく、やるかやらないかである」
「当社では、アルミニウムとセラミックの複合材料 (MMC材)を使った鋳造を行っています。金属を溶解さ せて合金化する時の温度管理などが難しく日本では数社し か製造できません。しかし、アルミの軽さで鉄の剛性を持 ち、低熱膨張、高熱伝導で放熱性に優れた材料なので、液 晶・半導体業界では多く使われています。MMC材は鋳造 だけでなく、加工も難しく、大手に出来ないものが当社に 依頼があります。製造が難しい故に、仕事をしながら常に 学んでいる状況です。会社の方針にも“能力があるか否か ではなく、やるかやらないかである”を設定しました。そ して社員には“失敗しても、そこから学べば良い”と言っ ています」と田中社長。
金属3Dプリンタへの挑戦
「金属3Dプリンタ導入を検討したのは、リーマン ショックでの不景気が原点です。リーマンショックで落ち 込む前は大型液晶パネル製造装置が好調であり、その間に 新しい事業への挑戦を行っていませんでした。その時に “景気が良い時こそ、次の展開に備えるべきである”と実 感しました。液晶・半導体装置メーカーの他に様々な業界 の会社と鋳造を通して取引があり、材料や構造に関して取 引先の技術者に直接提案する機会がありました。そこで話 題となっていた金属3Dプリンタの工法を他社よりも早く 理解して、この技術をどう活かすかとの提案力を身につけ ることが必要と考え、国内外の金属3Dプリンタメーカー を調査しました。海外メーカーは、壊れたときの修理や復 帰するのに数週間かかると言われました。そんな中で、当 社は3Dプリンタが初めてなので色々教えてくれるメー カーはないかと捜したところ、日本国内で製造しているマ ツウラのハイブリッド金属3Dプリンタに出会いました。 平成26年11月にLUMEX AVANCE-25を設備し、更に平成 29年11月にニューバージョンのLUMEX AVANCE-25を設 備しました」と田中社長。
LUMEX Avance-25担当の大隈伸也氏
「金属3Dプリンタで新規事業を立ち上げる為に、新し い人材が必要と考え、業務委託をしていた塗装会社で働い ていた大隈伸也氏に声をかけました。大隈氏は機械図面や 加工、材料の知識経験は全くありませんが、素直な性格を 見込み採用しました。実際に業務を始めると“ 出来ません とか、難しいです”とは一度も口にしません。例えば、3D プリンタ用に新しい3DCADを設備した時ですが、彼は CADを扱うのも初めてで図面も読めない状態でした。“ 所 詮CADは人間が作った道具だから簡単に出来るよ”と励ま したところ、一週間でCADメーカーのサポートが困るよう な質問をするまで習得していました。私も同時に3DCAD の研修を受けましたが、彼には勝てませんね。彼と私の2 人でこの事業を進めています」
「この業務が会社の儲けに貢献していないと彼が落込む 時期がありました。しかし、“そんなことはないよ”と声を かけました。事実金属3Dプリンタに取り組んでいるおか げで、全く新しいお客様が見に来られ試作の引き合いも増 えています。当初の試作では図面を持って来られ、これを 作ってくださいとの依頼が多く、金属3Dプリンタの強み を活かせないこともありました。現在では試作の構想段階 での依頼が増え、当社の提案が活かされています。また鋳 造の金属を溶かして固めることは、金属3Dプリンタで金 属粉を焼結することに通じるところがあると最近実感して います」と田中社長。
金属3Dプリンタ技術で世界のモノづくりの灯台に
「現在までに培った幅広い分野の部品設計思想とトポロ ジー最適化構造設計思想を融合させ、部品の最適軽量化・ 部品の高機能化を今後も提案していきます。その為にも LUMEX AVANCE-25でアルミニウム粉が焼結出来ること は、部品製作する上で最大の強みです。昨年ドイツで行わ れた3Dプリンタの展示会FORMNEXT2017に参加しました が、市場としてドイツが先行しています。しかし将来当社 の3Dプリンタ事業が世界から試作依頼が集まる灯台のよ うな事業に成長させたいと決意しています」と田中社長の 言葉です。
マツウラがLUMEXを出品した国内・海外の展示会では 同社のサンプルをお借りして出品させて頂いています。サ ンプルを見られた方々は驚きの声を上げられ、またこれら のサンプルはLUMEXの技術を実証しています。同社が行 う様々な挑戦がLUMEXの可能性を広げていると実感した 取材でした。
会社情報
- 会社名
- 東金属産業株式会社 様
- 本社/沼津工場
- 〒410-0022 静岡県沼津市大岡1281-3
- 函南工場
- 〒419-0125 静岡県田方郡函南町肥田423
- TEL
- 055-978-6011
- FAX
- 055-978-6010
- 役 員
- 代表取締役社長 田中 健太郎
- 創 業
- 昭和17年3月
- 従業員
- 65名
- 事業内容
- 液晶・半導体製造装置部品の製造・組 立、非鉄金属の砂型鋳造、金属3Dプリ ンタによる試作部品製作
- URL
- http://azuma-ks.co.jp/