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ユーザーを訪ねて
2018年10月号号のユーザーを訪ねて
No.175
製品カテゴリ:MX-520
住宅街にある工場で独自技術を駆使して精密機械部品を製造する
有限会社上田精工 様
今回のユーザーを訪ねては、JR北陸本線・鯖江駅から 車で西に10分の距離にある有限会社上田精工を取材いた しました。鯖江市内の住宅街の細い路地に入り、周りを全 て住宅に囲まれた所に会社があります。取材には北﨑栄社 長に対応頂きました。
同社は昭和47年設立で、精密機械部品製作を行ってい ます。鯖江市はメガネ生産が有名で、多くの会社がメガネ の生産に携わっていますが、同社は近隣の大手電機メー カー等の部品製作を主体にして業務を行ってきました。現 在では、多数のマシニングセンタ、NC旋盤、研磨機、ワ イヤー放電加工機を11人で駆使して、関東、東海の専用 機メーカーの精密部品製作を行っています。
社員から社長就任へ
創業者は上田賢治氏で、北﨑社長は2代目ですが、上田 氏とは血縁関係はありません。北﨑社長は地元の工業高校 を卒業して同社に入社して社員として働いていました。
「平成19年に社長に就任しました。社長就任5年前に創 業者から“お前やってくれ”と言われました。社長になれ ば、この会社で働く社員と家族の生活が私の肩に乗るわけ ですから、“嫌です”と返答しました。それから3年が経過 して再度創業者より“意思は変わっていないか”と聞かれ、 “意思は変わらず、出来ません”と返答しました。すると 創業者は“私も60歳で引退する意思は変わらないので、廃 業する”と言われました。当時会社のメンバーと常に難し い加工に取り組んでいて、モノづくりの楽しみを体感して いました。廃業して他社に移っても仕事は出来るが、この メンバーと一緒にやりたいとの強い気持ちがあり、 “ちょっと待って下さい。家族と相談して返答します”と 答えました。両親、妻ともに社長就任を応援すると賛同し てくれ、会社名も引き継いで平成19年に社員から社長に 就任しました」と社長就任の経緯を語る北﨑社長。
モーター巻線機専用精密部品への進出
「平成15年ごろに、当社の仕事先であった福井県内の大 手電機メーカーが地元から撤退するとの話がありました。 創業者と私で取引先を拡大するために、各地へ営業活動を 行いました。その時に現在主力であるモーター巻線機専用 機を作るメーカーとの出会いがありました。最初は図面を 頂き、無償で製作して納品もしました。徐々に技術力が認 められ少しずつ仕事量が増えて、現在では当社の主力ユー ザーになっています。先方からは“2倍やってくれるな ら、2倍の仕事を出します。3倍でもいいですよ”と言われ ています。しかし、難しい加工なので、そう簡単には生産 量は上がりません。またある時ミスがあり謝りに先方へ伺 うと“来なくても良いよ。それより1個でも早くモノを 作って欲しい”と言われる程、信頼を得るまでになってい ます」と北﨑社長。
立形マシニングセンタMC-600VFを設備
「当社では、様々なメーカーの工作機械を設備していま したが、マツウラの機械はありませんでした。高精度の部 品を安定して製造するには、機械の剛性などの造りこみが しっかりした機械が必要と考え、平成8年に製作された中 古機械のMC-600VFを平成23年に設備しました。15年 間使われた古い機械でしたが、社内にある他社メーカーの 機械と比べても安定した加工が行え、マツウラのモノづく り力を体感しました」と北﨑社長。
5軸立形マシニングセンタMX-520を設備
「MC-660VFを設備して、次はマツウラの5軸加工機を 設備する準備として資金確保を進めていました。その時政 府のものづくり補助金制度を知り応募しました。平成24 年度『ものづくり中小企業・小規模事業者試作開発等支援 補助金』に『環境問題推進プロジェクト』で採択され、平 成25年にMX-520を設備しました。廣田工場長が担当し 5軸割出加工は問題なく加工できるまでになっており、現 在同時5軸加工にも挑戦しています。MX-520の導入によ り生産能力が向上したので、2台の機械が不要になりまし た。また5軸加工機を設備したので、3次元測定器が必要 になると思い、取引先に打診したところ、“当社の3次元測 定器で測定したデータを送るので、その設備投資はしなく ていいですよ。生産に注力して下さい”と言われました。 3次元計測器を設備すると、計測する人を雇わないといけ ませんし、作業工数も取られます。現在までMX-520で加 工した複雑な形状でも加工不良は出ていないので生産に集 中できて助かっています」と北﨑社長。
図面に書けない加工ノウハウ
「ある取引先がアメリカに工場を進出したとき、今まで 当社で加工していた部品をアメリカの企業に当社のサンプ ル品も付けて委託しました。アメリカで作られた部品を取 り付けて専用機を稼動すると不良品しか出来ません。それ でその部品を当社に持ち込み修正をしたところ、見事に良 品が出来たことがあります。しかし、取引先の担当者に は、その理由が分かりません。当社では長年の経験で、そ の部品が機械の中でどう使われ、どう動くかを理解してい ます。図面に書けないノウハウを当社は培ってきました。 このように設計者がその部品にどういう動きをさせたいの かまで汲み取って部品を作っています」と北﨑社長。
難しい加工に喜んで挑む企業文化
「当社では、簡単な部品を現場に出すと嫌がられます。 経営的には数量もあり利益確保できるのですが、難しくて 挑戦的な部品を現場の担当者は喜びます。失敗すれば材料 費がムダになり赤字となりますが、失敗の経験が当社にノ ウハウとして蓄積されます。それ故“失敗を恐れるな”と 社員には言っています。部品を作る上で、設計者の要求を 考えることは、私が考えるモノづくりの楽しみです。設計 者と意思が通じ、“それが分かってくれた”と感激してくれ ます。納品した部品を取り付けて専用機で良品が出来る と、設計者も嬉しく、また作った私達も嬉しさを共有でき ます。その積み重ねが当社の企業文化を育んでいます。工 場ではプログラムを作る専用の担当者も部屋もありませ ん。各機械の前にPCを置いて、その中にインストールさ れたCAD/CAMでプログラムを担当者自ら作って責任を 持って加工しています」と北﨑社長。
加工した部品が営業マン
「世間では、地球温暖化などで環境問題が大きく取り上 げられていますが、取引先も環境問題解決関連の業務のた めに業績を伸ばしています。それに伴い当社の仕事量も増 えています。営業活動しなくても、納品した部品が次の仕 事を取ってくれるので、当社はモノづくりに集中できま す。但し、人材不足が悩みです。当社では任されて仕事に 取り組むので3年経過するとモノづくりの楽しさを実感出 来ますが、そこに到達する前に退社する場合があります。 5軸加工機のMX-330の設備を考えていますが、担当する 人材がいないので足踏み状態です」と北﨑社長。
今回の取材で初めて訪問しましたが、住宅街の細い路地 に工場があり驚きました。また業務内容をお聞きすると、 最先端の専用機に装備されている部品を製造していること に再度驚きました。更に、“もの言わぬ、モノがものを言 う、モノづくり”との言葉がありますが、同社のモノづく りを通じて取引先との深い信頼を培っていることに驚いた 取材でした。
会社情報
- 会社名
- 有限会社上田精工 様
- 会社工場
- 〒916-0057 福井県鯖江市有定町3丁目4-21
- TEL
- 0778-51-6834
- FAX
- 0778-52-0520
- 役 員
- 代表取締役 北﨑 栄
- 設 立
- 昭和47年8月
- 従業員
- 11名
- 事業内容
- 精密機械加工部品製作