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ユーザーを訪ねて

号のユーザーを訪ねて

No.120

製品カテゴリ:MAM72-63VLinear Motor Series

ファインセラミック部品で半導体・液晶部品・電子機器など最先端産業分野に特化

株式会社日本セラテック 様

今回のユーザーを訪ねては、プロ野球の新規参入で楽天のホームグランドとなった宮城県仙台市にある、株式会社日本セラテックを訪問致しました。
昭和62(1987)年に会社設立。
設立の目的は日本セメント(株)(現太平洋セメント)時代に建材用セメントを粉砕するセラミックボール製作などで蓄積したセラミックスの技術力を 成熟傾向のセメント業界から新規産業として独立したセラミック事業への展開を図ることでした。
設立時は東京都西多摩郡に工場があり、昭和64(1989)年に現在の仙台市泉区へ移転しました。
事業部はエンジニアリングセラミックスを扱うセラミック事業本部とエレクトロニクスセラミックスを扱うメガセラ事業本部に分かれています。
今回訪問した仙台工場はセラミック事業本部が置かれています。
社是は「信頼・進取」を掲げ、ファインセラミックスを基本として常に革新的材料開発を続け、半導体産業など時代をリードする産業へセラミックス部品を提供しています。
平成15(2003)年にはジャスダックに上場しており、平成16(2004)年11月には仙台の七十七ビジネス振興財団より*「七十七ビジネス大賞」を受賞するなど、宮城県内でも注目を集めている企業です。

*「七十七銀行が創業120周年を記念して、宮城県の経済発展と技術開発に貢献した企業を表彰するために設けられた大賞」

材料から特化するセラミックス技術

 セラミックスと言えば日本で古から陶器などで使用されていますが、陶器であれば土で形状を作り、それを高温で焼いて製品に作りあげます。
ファインセラミックスは陶器と違い、土でなく高純度の原料を成形させた後、焼結させることで形状を作り上げます。
日本セラテックでは、この原料(アルミナ、ジルコニアなど)の調合技術と自社での焼結技術を有しており、オリジナル材料を作る開発力に長けています。
このことが、焼成後の加工に関して高精度加工できる技術力として高く評価されています。
加工には二つあります。
一つには焼結する前の成形状態でのグリーン加工です。
セラミックスは焼結で収縮しますから、この収縮を予想して加工寸法を決めなければ、最終形状に近くなりません。
原料調合から行っているために焼結後の修正がないように寸法を補正するノウハウを社内に築き上げています。
また焼結後の仕上げ加工では、ダイヤモンド砥石による研削加工を行い、高精度のセラミックス部品の製造を行っています。
この仕上げ工程で研削加工での高速加工機が必要になり、マツウラの4台のマシニングセンタが設備されています。
主軸回転2万回転の高速機FX-5、リニアモータを採用し主軸回転数6万回転のLX-1、主軸回転3万回転の横形高速機H.Max-500、 そして平成16(2004)年11月に主軸回転数2万回転の5軸加工機MAM72-63Vが設備されています。
セラミックス部品は板形状の部品が多く、クランプにも独特な工夫がされています。
例えばガラス板の上にセラミック部品を特殊糊で接着して全加工を実施。
治具がガラスのため外周加工でも砥石工具が破損しないなど随所に現場での改善が見られます。
「セラミックス加工は教科書には載っていません。現場力が生産性を決めますので、オペレータの挑戦が重要」と児玉工場長は語っています。

東北大学などとの共同研究で独自技術を開発

 売上高50% 強を半導体・液晶製造装置向けセラミックス部品を製造しています。
この分野は日進月歩で技術開発が行われ、その装置部品を提供するためには、高い技術力が必要です。
日本セラテックが仙台に工場を設置した理由に東北大学との共同研究があります。
会社の開発人員は10名程度ですが、東北大学の半導体製造技術の権威、大見忠弘名誉教授を顧問に迎え、 常に変化する要望に応えるために、加工技術や新材料の開発に取り組んでいます。
結晶と結晶のすき間を従来の十分の一程度に縮めた「ポアフリー」と呼ばれる新材料は半導体製造工程の歩留まりを向上させました。
また平成13(2001)年に開発した軽量セラミックスは集積回路をウエハーに焼き付けるステッパに使う「ステージ」装置に採用。
「ステージ」の重量が例えば100㎏から30㎏に軽量化し、半導体製造工程の高速化を実現しています。
更には自然科学研究機構・核融合科学研究所との共同研究で、世界で初めてのセラミックスのマイクロ波焼結を実用化。
これにより通常炉(電気炉)で1週間程度かかっていた焼結工程が3日程度に圧縮。
このように東北仙台の地で、次々と新技術の開発を産学官共同研究の成果として出していることに驚嘆しています。

夢は宇宙へ

 まったく新しい分野で、「ZPF」と呼ばれる新セラミックスが望遠鏡に使う反射鏡の新素材として天文学界から注目されています。
望遠鏡の材料として主流のガラスに比べ、破壊強度また研削加工性で優れていることから、 次世代望遠鏡(口径30m)の反射鏡として有望な材料であると日本天文学大会で報告されています。
「正式に採用が決まれば、「ZPF」は世界望遠鏡のデファクトスタンダードになり、独自技術が世界中に発信することになる」との夢が広がっています。

 実際に工場を見学すると社員の方々は若く、平均年齢が28歳とのことです。
世界最先端のものづくりが仙台の若い技術者から生み出されているのに感動いたしました。
児玉工場長から「新しい部品を加工する時、すぐ全員が集まりワイガヤ会議を行っています。 やったことのない加工ですから、皆で意見を出し合い解決策を見つけて納期をお客様に返事します。 全員が納期に関して納得していますから、苦情は出ません」と。
全員が考える訓練を受け、自ら行動する姿勢が日本セラテックのものづくりを支えていると実感。
今回の取材を通して、セラミックスの分野に特化し、産学官に支えられた新技術開発力を基礎に原料調合から最終製品までの トータルソリューションを実現している企業像を目の当たりにし、大手企業と対等にビジネスに挑戦できる「日本のものづくり」の一つの理想体と確信した取材でした。

会社情報

会社名
株式会社日本セラテック 様
本社
宮城県仙台市泉区明通3-24-1
電話番号
022-378-9231
FAX番号
022-378-9236
代表者
代表取締役社長 川田 正興氏
資本金
17億9519万円
売上高
約61億円(2004年3月期)
従業員数
439名(内205名は臨時従業員)
主 要 製 品
エンジニアリングセラミックス(半導体、液晶装置、機械部品、耐磨耗部品等)と エレクトロニクスセラミック(圧電アクチュエータ、圧電トランス、圧電発音体等)の 開発・製造・販売
URL
http://www.ceratech.co.jp/

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