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ユーザーを訪ねて
号のユーザーを訪ねて
No.154
製品カテゴリ:
チタン加工20年の実績と150台の多彩な加工設備でチタン精密部品加工専門の
株式会社西村金属 様
今回のユーザーを訪ねては,福井県のJR鯖江駅から車で北へ5分ほどの株式会社西村金属を取材しました。取材には西村憲治専務取締役に対応頂きました。同社のある鯖江市は眼鏡産業で有名な町で、日本で作られる眼鏡フレームの出荷額の約90%を生産しています。同社もこの環境下で眼鏡フレームのネジを作ることで西村忠憲社長が昭和43年に創業しました。西村専務は長男で、子供のころから将来は会社を継ぐ決意を持っていました。そこで大学では機械工学を学び、卒業後は大手企業の品質管理、また機械加工を経験して同社に入社しました。「1998年から2000年にはIT革命など大きな変革がありました。それまで眼鏡業界が生産の100%でしたが、生産が冷え込み、眼鏡に依存していてはダメだと思っていました。営業が一人もいない状況で、ホームページを立ち上げようとした時に、IT関連に強い弟の西村昭宏常務が入社。2000年にホームページを立ち上げました」と西村専務。
ホームページ開設で業態が大きく変化
「ホームページ立ち上げ当時は、会社紹介のみでしたが、一歩先へ出ようと考え、当社の“想い”や“技術”を表現しようと内容を変更していきました。それが話題を呼び、様々な賞を頂きました。これにより更に注目が集まりホームページが契機に大きく業態を変化させていきました」と西村専務。平成17年度NCネットワークホームページ大賞・日本ものづくり誌編集長賞受賞、平成18年度日経ものづくり大賞・日経BP特別賞受賞、都道府県等中小企業支援センター情報化優良企業表彰・優秀企業受賞、更に平成21年度元気なモノづくり中小企業300社「日本のイノベーションを支える中小企業」部門受賞しています。ホームページトップに、「NC旋盤加工からマシニングセンタ/ヘッダー/プレス加工まで、小径/微細の精密部品加工のことならチタン加工技術の西村金属」と表記され、ホームページを通じてのビジネスが殆どになっています。
チタン加工のオンリーワンを目指す
「眼鏡のネジは真鍮から洋白へ移り、締付力が弱いのでステンレスに変わりました。そしてチタンに移行しました。チタンは、人体に対するアレルギーが少なく、そして軽い、錆びにくいなど、眼鏡に適している材質で、眼鏡の部品に多く使われるようになりました。このような環境の中から、真鍮ネジの作成から始まり、チタン製の蝶番、チタン製のメガネパーツの作成と技術を積み重ねていったのです。そのおかげで、ネジ専門から眼鏡のパーツ全部を手掛け、旋盤・フライス加工、プレス加工にも取り組み、素材から製品の一貫生産ができる技術力を持つことが出来ました。今では、すべての工程をチタンで作れる体制となっています」と西村専務。同社は、チタン加工歴20年のベテランが毎日チタンを加工しているので、十分な知識と経験、また体制が確立しています。しかしチタンは熱伝導率が小さく、工具の磨耗などの問題が発生しやすく、切りくずが燃えるなどの危険性もあります。また切削油がチタン切削加工では重要ポイントになります。同社オリジナルで特殊配合されたものを開発して使用しており、この油でないとチタンは切削できないとのことです。
1個からの試作・開発から数万個の量産加工まで対応
同社は、眼鏡部品から半導体製造装置、医療機器部品、電極、航空機部品まで幅広い分野に取り組んでいます。また、150台を超える多彩な加工設備と加工技術で最適な製造方法を提案出来ます。これらの実績で1個の試作・開発から量産加工まで対応しますとホームページでアピールし営業活動を実施しているので、新規開発の相談件数は月に100件以上あります。「新規案件は、3日以内に答えを返すことを目標にしており、毎日新しい図面や試作に取り組んで日々葛藤しています。試作部門は当社にはなく、全従業員が生産をしながら加工技術の開発に取り組んでいます。そのことで社員は日々勉強し、技術向上に取り組まざる得ない状況です。仕事が人を育成していると言えます」と西村専務。
オリジナル商品の開発に挑戦
同社では委託加工の他に自社ブランドの製品を開発・販売しています。一つは「ペーパグラス」という厚さ2mmの老眼鏡です。「ネジ、蝶番、フレームなど眼鏡の全てを作る技術があります。モノづくりメーカーとして一つだけこだわりの眼鏡を作ろうと思い、この老眼鏡を作りました。折りたたむと2mmの薄さなになることがポイントです」と西村専務。もう一つは「逆さゴマ:SAKASA-KOMA 100% Titanium」です。「逆さゴマ」は、回すと逆さまに立つコマで、昔ながらの日本の玩具でプラスチックや木で出来た物があります。同社は全てチタン製で逆さゴマを作成しました。両アイテムともネットや百貨店で販売されています。「これらの商品は当社の売り上げには貢献していません。商品開発・技術開発することで、委託加工からの脱却、また受け身の心からの脱却を目的にしています。当社は100%お客様の希望されたものを多品種少量ロットで提供しています。しかし、モノづくりに探求心が無くなると会社の成長が止まります。商品開発・技術開発を行うことで、社員の技術また意識向上が図れれば良いと考えて取り組んでいます」と西村専務。
5軸制御立形マシニングセンタ「MAM72-3VS」導入
平成24年9月にマツウラの5軸制御立形マシニングセンタ「MAM72-3VS」(パレット40枚装備)が導入されました。「お客様からコスト、納期の厳しい要求があります。お客様の図面から判断して、複数の工程に分けた機械加工での見積もりを提出、しかし価格が合わず受注出来なかったこともありました。それでワンチャックで全加工出来る5軸加工機が欲しいと思っていました。
また色んな加工をするためにジグが沢山必要で、通常の機械ではジグ交換で機械が止まってしまう。同時5軸加工で多面パレットのMAM72-3VSを見た瞬間、加工イメージが次から次と湧き、また多面パレットにより色々な発想が湧いてきました。未来のために必要になる機械であると考え設備しました」と西村専務。
未来に向かって
同社はチタン加工専門として企業だけでなく、大学の研究機関からの仕事も多数あります。特にチタン材で実験装置を作る医療関係の研究をしている最先端分野からの依頼です。「当社は、大学からの依頼を大事にしています。始めは担当の教授と打ち合わせを行いますが、実務では研究室の学生との話になります。その時出来るだけ親身になって協力するようにしています。優秀な彼らからは将来企業または研究機関に入り研究の中枢を担う可能性があります。彼らに、私たちのモノづくりへの熱い想いを伝えていくことが、これからのモノづくり日本を支え、さらに発展していくものだと信じています」と将来に向けて種まきを意識している西村専務の言葉です。
インタビューの最後に西村専務は「MAM72-3VSは、夢を持った機械、可能性が無限にある機械です。この機械で、ガンダムをプラモデルのパーツから作りたいと考え、社員に仕掛けています。完成したガンダムを作ることは、CAD/CAMを駆使すれば難しくない。しかし、板から作ったら面白い。チタン製のガンダム、楽しみを仕事に持ち込みたい」と夢を語って頂きました。
会社情報
- 会社名
- 株式会社西村金属 様
- 本社
- 〒916-0019 福井県鯖江市丸山町3-5-18
- TEL
- 0778-51-2348
- FAX
- 0778-52-6946
- 代表者取締役
- 西村忠憲
- 設立
- 昭和43年4月
- 従業員
- 30名
- 事業内容
- チタン精密部品加工
- URL
- http://www.nsmr.jp/