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ユーザーを訪ねて
2016年4月号号のユーザーを訪ねて
No.165
製品カテゴリ:MAM72-35V
お客様のご要望に“何でも造る。何でも削る”をモットーに解決し、“高付加価値部品世界トップブランド”を目指す
株式会社石金精機 様
今回のユーザーを訪ねては、北陸自動車道の流杉スマートインターチェンジから3分ほどの株式会社石金精機を取材いたしました。取材には清水克洋社長にご対応頂きました。清水社長の祖父がマイクロメータ等の基準ゲージ製作で昭和26年に富山市石金の地で創業しました。会社名は創業時の地名が由来しています。清水社長は大学卒業後、東京の設計会社で2年間働いていましたが、2代目社長の父から帰ってくるように言われ入社しました。しかし、入社2年後に2代目が病気で他界され、26歳の若さで社長に就任し ました。
「亡くなる年の4月1日に専務取締役に就任予定でしたが、3月29日に2代目が亡くなり、4月8日に代表取締役社長に就任しました。経営ノウハウを受け継ぐ前の就任でしたが、2代目の経営手腕により、その当時会社は順風満帆であり、何の不安もない状況でした」と清水社長。
工作機械の部品製作を行う
「創業当時は、富山の大手企業の測定器ゲージ等を作っていましたが、その後その会社から回転工具の製造を行う ようになりました。回転工具という最終製品を作るには高い精度が求められるので、恒温工場を作って精度確保をするようになりました。回転工具を製作したことで技術力が飛躍的に向上することが出来ました。その結果として様々な工作機械メーカーとの取引が始まり、工作機械の主要部品の製作を行うようになりました。そんな矢先の社長就任でしたが、2代目の経営手腕のお陰で大きな問題もなくスムーズに経営を行うことができました。更には社長就任翌年の平成17年に恒温研削工場の建設と工作機械6台を増設して加工精度の向上と生産力アップを実現しています。こ のことにより売上げが約2倍近くアップしました」と清水社長。
平成18年にはISO9001、14001の認証取得を行い、創業55周年記念私募債を発行し、複合旋盤・5軸マシニングセンタを導入するなど経営革新を清水社長は進めました。
第三創業を目指して
「好調はいつまでも続かず、リーマンショックで売上げが激減し仕事が無い状況になりました。金土日月と会社を休み、火曜日は丸一日仕事、水曜日は半日仕事するともうやることがなくなり、昼からは全員で清掃をし、木曜日は教育訓練を行っていました。この経験を通して会社経営の難しさを感じた一方で、“リーマンショックは100年に一度の不況。つまり私が社長を行っている間にはもうこの様な不況はない、今後も強気で経営をやろう”と決意しました。そして第三創業を目指したのです」
「企業寿命30年と言われる中で、第一創業は測定器、第二創業は工作機械部品と業態を変化させていったことが60年間会社を継続できた理由ではないか。リーマンショックの影響もありこのまま工作機械事業だけを続けていては利益が出ない。第三創業、つまり業態を変化させ、創業100周年に向けて新しい事業を立ち上げていこうと考えました。航空機事業、医薬機器事業、設計製作事業と試作品事業の4つを立ち上げて、業態変化をしていこうと考えています」と清水社長。
航空機事業への参入
「平成24年からMRJ(三菱リージョナルジェット)の試作機向け部品の製造に着手し、現在までに約40種類の部品を納入しました。その間平成25年にはJISQ9100(航空宇 宙産業品質マネジメント)の認証を取得し、本格的に航空機 事業へ参入を果たしました。平成26年に5軸マシニングセンタの専用工場として、第4工場を建設し航空機部品の生産を本格化しました。第4工場はICチップ入りの社員証を使って入出管理を行い、入れる社員も限定しています。現在5軸マシニングセンタなどの工作機械が9台稼動し、オペレーター3人、プログラマー4人で女性社員も頑張っています」 と清水社長。
マツウラの5軸マシニングセンタを導入
「当社が製作している航空機部品は、MRJの主翼部品や防衛省向けの機体部品です。図面の中にはインチ仕様のものもあり、またアルミのみならず様々な材料の加工を行っています。米国航空機は月産12機の量産体制に入り、部品によっては月に200個以上作らないといけない部品もあります。航空機事業を如何に採算ベースにするかと考えた時、長時間無人運転ができる5軸マシニングセンタしかないと考え平成26年1月にマツウラの5軸制御立形マシニングセンタMAM72-35Vを導入しました。MAM72を夜間無人で動かすことで、競争の厳しい航空機事業であっても十分競争に勝っていけるのではないかと思います。今後、国内において民間航空機の部品製作を行っていく為には、MAM72のように長時間無人運転可能な多面パレットの機械が必ず必要です」と清水社長。
航空機に憧れて新卒学生が入社
新卒の大学生の採用は、Webでの活動が中心となり中小企業より大手企業にとって有利な状況が続いています。しかし同社は新卒採用で人材確保しています。
「新卒採用を基本にしています。新しい手法で加工をする場合、過去の経験が邪魔をするときがあります。しかし経験の少ない人は、新しい発想の加工方法に挑戦することが出来ます。また機械も工具も進歩し、無茶なことが可能になっています。弊社では、毎年30人ほど受験し2,3人採用しています。昨年は航空機を前面に打ち出したとこ ろ、大手重工業メーカーを受けている学生が受験に来ました。彼らは面接で“航空機製作に携わりたいが大手に入社しても希望が叶うかどうかわからない。この会社であれば間違いなく航空機製作が出来る”と言っていました。間違いなく学生の意識も変化しています」
「愛知県や岐阜県は航空機製作を行う大手重工業と距離は近いにも関わらず産業の中心は自動車産業です。しか し、富山県は距離的に遠く物流では不利ですが、航空機の仕事を希望する優秀な人材が集まります。距離は不利な条件ですが、人材面では有利になると思っています」と清水社長。
様々な分野で富山県の企業・地域活動を支援
同社は、富山県のプロバスケットボールチーム「富山グラウジーズ」のオフィシャルユニフォームパートナーになっています。取材をした応接室には、同社名がプリントされた真赤なユニフォームが飾られていました。また選手2人を3Dレーザー測定器で全身をスキャンして、5軸マシニングセンタで削ったトロフィーをチームに寄贈しています。
また、富山県のモノづくり企業に航空機分野への参入を促す共同受注研究会の会長も努めています。新聞紙上で「MRJは主に地方都市間を結ぶ航空路線に利用されると聞いており、地域振興の面からも責任が大きい。初飛行を契機に更に受注が増えれば、県内製造業の新たな強みになる」と語っています。
清水社長は37歳と若手の経営者で、取材をしていても勢いを感じました。創業100周年に向けて期待感が膨らむ取材となりました。
会社情報
- 会社名
- 株式会社石金精機 様
- 本社
- 〒939-8032 富山県富山市流杉255(富山市第二機械工業センター内)
- TEL
- 076-423-8317
- FAX
- 076-425-0242
- 代表者
- 代表取締役 清水 克洋
- 創業
- 昭和26年
- 設立
- 昭和44年
- 事業内容
- 工作機械、半導体装置、HDD組立装置、省力機械等の精密機械部品の設計製作、自動車部品等の試作、医療関連・航空機関連部品の製作
- URL
- http://www.ishigane-fas.co.jp/