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ユーザーを訪ねて

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No.119

製品カテゴリ:MAM72-63V

「航空、宇宙産業を技術で支える企業 標準部品、精密部品で特化」

川西航空機器工業 株式会社 様

今回のユーザを訪ねては、JR川西池田駅から徒歩15分にある川西航空機器工業株式会社を訪問いたしました。
創業は昭和25(1950)年に大阪の豊中市で豊中電気株式会社として創業し、当時電電公社向けのリレーなど電気部品の製造販売を行なっていました。
昭和29(1954)年に航空機部品の製造販売も開始、昭和42(1967)年に現在の川西市に新社屋を移されました。
昭和45(1970)年航空機の市場を拡大する為に、地元の地名を採用した川西航空機器工業株式会社に商号を変更し、 新明和工業株式会社へYS-11の部品の納入を開始。
それ以降、本格的に航空機器部品の製造・販売を開始し、現在に到っています。
現在の主な納入先は防衛庁契約本部・航空・陸上・海上自衛隊、三菱重工業、川崎重工業、石川島播磨重工業、富士重工業など 航空機関連では日本有数の会社が名を連ねています。
このことは、同社の長年培った信頼、優れた品質、そして技術力を証明するものです。

航空・宇宙機器用共通部品の製造

 航空・宇宙機器では大型の部品を想像しますが、同社では全ての航空機や宇宙機器に使用されるワッシャ・シム (あらゆる接合面の安定に不可欠な部品)、クランプ(機体内のあらゆる配管やホース類の固定する部品)、 ボンディングジャンパー(機体と搭載している電子部品類との電位差をなくすために、両者間を電気的に接続し、電気的平衡を維持させる部品)、 またファスナ(機体の各部で物と物を締結する為のボルト、ナット、リベットなど)など3,000種類以上の部品を製作しています。
小さい部品ですが、大変厳しい環境の中で使用される為に、求められる品質・耐久性は高く同社の技術力でなければ製作できないものです。
この「標準部品」と呼ばれる製品は自社倉庫にストックし、同社のホームページで在庫数などがアクセスできます。
またその情報を基にお客様からの依頼に対して、迅速な供給が行なえる仕組みまで既に完成させています。

ヘリコプター用ドア開閉システムの開発

 ヘリコプターのドア開閉及び緊急開放装置では、同社の技術力が大きく貢献しています。
例えば川崎重工業のBK117ヘリコプターは、現在国内外の警察、消防、防災、緊急医療などで幅広く利用され、 既に500機以上が世界の空で活躍しています。
その機体の開発と平行して、同社ではドア開閉システムの設計・開発・製造を行い昭和52(1977)年に納入を開始しています。
それ以降陸上自衛隊のOH-6観測ヘリコプターや最新鋭OH-1などのドア開閉システムも設計、開発も行なっています。
ヘリコプターが飛行する環境を考えれば、ドア開閉装置の重要性が実感できますが、そのコンパクトな装置を見て同社の機械的技術力の高さに驚きました。

薄板金部品を機械加工部品で製作

 航空・宇宙機器には様々な電子機器が搭載されていますが、その筐体は0.6~1.6mmのアルミニウム合金板を溶接・鋲接等で組立てた薄板板金構造物で構成されています。
同社ではこの筐体を薄板の曲げ、溶接作業等で製作していましたが、それぞれの部品が歪む為、品質の高い筐体を作成するのに大変苦労していました。
それ故、工場の設備機械も板金加工用は多数ありましたが、マシニングセンターなどの機械加工設備は少ない状況でした。

 解決策が見えず、悩んでいた深田専務は昭和63(1988)年の大晦日にNHKで放映されたマツウラが米国の航空機関連会社に設備した主軸回転75,000回転の 超高速加工機を紹介した番組を何気なく見られました。
その中でアルミニウム合金の塊を1.5mmの壁に削り出す光景が映し出され、「この技術であれば板金部品を機械加工で製作できる」と直感。
翌日の元旦、全社員での初詣の時に堀社長に昨日のTV番組について報告したところ、堀社長も偶然にも同じ番組を見ていました。
「直ぐマツウラへ行って技術的打ち合わせを行う」と同意され、正月明け早々にマツウラ本社工場を堀社長、深田専務が訪問されました。
早速マツウラの営業技術の担当に薄板板金部品を削る加工について説明したところ、 「加工物が薄い為に特殊な治具が必要になり、治具費で約500万円は必要です」との返答でした。
深田専務は自ら構想した「治具を極力使用しない治具レス加工方法」を説明、マツウラの技術者と協議しました。
その結果、当時の高速加工機FX-5を使用し、見事に薄板形状の部品を切削加工で仕上げることに成功しました。
現在では治具を使用しないで薄板形状を加工することは通常の技術になっていますが、深田専務の構想が原点となっている訳です。
平成元(1989)年7月に主軸回転20,000回転の高速加工機FX-5を導入、薄板形状加工への挑戦が始まりました。
現在では各種筐体の基準となる部品は、この高速加工機FX-5で作成し、その周辺は今までの薄板部品で構成する方式を完成しました。
高速加工技術での切削による基準部品の精度が向上、安定します。
そのことで、周辺の板金部品の曲げ、溶接加工が容易になり、筐体部品の品質安定と納期短縮、さらにはコスト低減など生産革新が行なえました。

夢は宇宙に

 高速加工技術を磨きながら、更なる市場への挑戦を続け宇宙関連分野へ同社は参入しました。
平成2年にはH-1ロケットに搭載された「環境測定衛星搭載用観測機」の主要部品を設計・製造。
更にはスペースシャトルのスペースハブに搭載された日本チームの研究に用いる宇宙実験用ロッカーの製造・組立てを行いました。
そして最近では、米国、ヨーロッパ各国、カナダ、日本、ロシアなど15カ国が参加する国際宇宙ステーション(ISS)計画で、 日本が担当する日本初の有人活動実験棟「きぼう」の空調機材を5年越しの開発を経て納入しました。
「宇宙空間で使用される為に、材料や加工方法も特殊であり、大変苦労をしました。 しかし付近の小学校の工場見学を受け入れた時、この機材について説明しました。 子供達から近くの工場で宇宙空間で使われる機器が製作されていることに大感動しましたと言われ、 社員にとっても大変嬉しいことでした」と坂本部長の言葉でした。
この国際宇宙ステーション(ISS)は平成18(2006)年の完成に向けて40数回の打ち上げを行い、宇宙空間で組立てが行なわれます。
同社が作成した空調機材を搭載した宇宙ステーションを見上げる日も、そう遠くはないでしょう。

5軸加工機で更なる挑戦を

 同社の進化は留まる事はありません。
次のステップとして本年3月にマツウラの最新鋭機MAM72-63Vの6面パレット付きを導入。
本機は500角(最大ワークサイズφ630×H450mm)のパレットを装備し同時5軸加工が行なえ、 また6面パレットを装備する事で、多品種少量生産また無人運転まで可能にする次世代マシーンです。
深田専務は「航空・宇宙の分野は、まだまだ伸びていく。 次世代の航空機開発が始まり、その部品を考えると5軸は欠かせない加工技術であり、出来れば更に大型の機械導入も将来は考えている。 機械加工は日本がトップの技術を持っている。 メイドインジャパンの中には日本の国力が詰まっているので、絶対に日本の製造業の将来は明るい。 しかし、明るくする為には、その産業が好きでなくてはいけない。 我が社は航空機好きでです、好きであるから絶対に生き残る。」と力強く語っています。

 航空・宇宙産業と言えば、高精度な部品を想像しますが、同社を訪問して、先ず驚いたのは標準部品といわれる小さな部品でした。
その些細な部品に欠陥があれば大事故の発生の可能性があり、小さくても品質、耐久性が求められることに驚きと、畏敬を感じました。
また薄板部品を切削加工で行なうことは、今では当然の技術ですが、先駆けた故に同社の技術力は他社では追従が出来ないものです。
また板金加工を専門に扱っている企業では機械加工で製作することなど、絶対に発想できないものです。
同社は更なる品質向上を目指し、平成10年にはISO9001の認証、更には品質規格で最も厳しい航空・宇宙産業規格JISQ9100の認証を平成16年に取得。
またIT時代で情報漏洩問題がマスコミ等で大きく扱われていますが、その対応策として情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)にも挑戦されています。
納入先から支給されるCADデータや機密情報の取り扱いで、信頼性及び安全性を高める仕組み作りに着手されています。
同社はあらゆる方面で、常に挑戦し続ける企業文化を持つ企業であり、その進化のお手伝いにマツウラのマシーンがお役に立っていることに誇りを持てた取材でした。

会社情報

会社名
川西航空機器工業 株式会社 様
本社
兵庫県川西市下加茂2丁目1番6号
 電話番号
072-759-4145
 FAX番号
072-757-0522
那須工場
栃木県那須郡西那須町二区町474
 電話番号
0287-37-5611
 FAX番号
0287-37-5612
代表者
代表取締役社長 堀 洋二氏
資本金
6,000万円
売上高
12億円(平成15年度実績)
従業員数
50名
主要事業
航空機器部品及び電子機器搭載部品等・宇宙開発関連機器の部品等の製造販売
URL
http://www.kapp.co.jp/

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