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シングルorダブル

令和3年秋号のシングルorダブル

No.202負うた子に教えられて浅瀬を渡る

 ソーシャルネットワークやオンラインゲームのデジタル空間では、当人同士が現実空間での情報を持っている場合は別ですが、リアルな世界のヒエラルキーは存在しません。50代の成人男性が中学生に敬語を使っていることもあるでしょうし、ゲームの上手い子供が操作の覚束ない社会人を叱り飛ばして社会人が謝っているなんてこともザラにあります。スキルに応じた公平さがあるのがデジタル世界ということでしょうか。
 デジタル世界は、基本的に匿名の自由活動です。デジタル時代の黎明期には、物事が秩序を持って展開され快適な空間になると期待されていましたが、実際はエントロピー増大の法則の通り、物事は放っておくと乱雑に無秩序な方向に向かい、自発的に元に戻らず、格差の増大が進んでいきます。自由と秩序を同居させるには外から意図的に仕組みを加えなければいけないという図式が、デジタル社会にも当てはまる訳ですが、ソーシャルネットワークであれば知識量だったり発信力であったり、オンラインゲームであればゲームスキルであったり、その格差に応じたヒエラルキーが形成され、さらにその格差が不可逆的に広がっているように感じます。
 このような格差を生み出すデジタル空間は、日常生活や政治・経済・科学の分野で加速度的に浸透しており、従来型のリアルな空間とデジタル空間の両方に適応していくことが、法人・個人両方に求められる時代に入りました。若い世代が直面するこれからのリアルとDXの両面での価値を上げるという競争環境は、一昔前とは大違いで複雑な作業が必要だと思います。
 工作機械の製造は、まだまだリアルな現場が主体であり価値の創造も現場に相当な量を依存しますが、今後DX技術の付加価値がどんどんその領域を増やしていくのは間違いありません。会社も喫緊の課題として鋭意取り組んでいますが、やはり全社レベルでのDXに対する理解・浸透が今後の肝と言えます。その為には次代を担う若手の育成が、事の成否を分けることになります。とは言え、いやー、今の若い人達は本当に勉強が大変です。しっかり勉強してもらって、私にも色々と教えて下さい。

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