トピックス
シングルorダブル
令和7年春号のシングルorダブル
No.216理想のロボットハンド
マツウラが注力するマルチパレット・マルチツール仕様の自動化・無人化マシニングセンタは、多品種少量生産を得意としています。今後さらなる自動化を推進するのに、各パレットにロボットによるワーク素材の装着、完成品の脱着が要望されます。しかし、同一ワークを量産するならロボットハンドも多くとも2種類で済みますが、多品種少量生産となるとそれら各ワークの素材・完成品形状に対応したハンドが種類分だけ必要になり、大量のロボットハンドのコストもさることながらそれらを収納・設置する場所も問題となります。特に繊細で複雑形状の完成品を掴むのは至難の業で、自動加工システムとしての実現性のハードルは、非常に高いものと言えます。
そこで昨年のJIMTOF 2024では、自動化・無人化の一つのプラスアルファ事例としてロボットを活用した実際的なデモンストレーションを展示しました。5軸立形マシニングセンタMAM72-42Vの段取り台横に台車に載った協働ロボットシステムを設置し、搭載される32個のパレットの内、2つのパレットを素材も完成品も一つのハンドで掴めるシンプルな形状のワーク加工専用で使用します。イメージとして日中は30個のパレットを使用し付加価値の高い多品種少量生産を、夜間は無人運転でシンプルなワークを台車上のワーク素材があるだけずっと繰り返し量産加工する。種類が多く数の少ない付加価値の高いワークから量の多いシンプルなワークまで、マツウラのメインユーザーであるジョブショップが要求される幅広い仕事を想定して、機械稼働時間を最大限に引き伸ばすアイデアをお見せしご来場の皆様から好評を得ました。
先日、先端ロボットメーカーの首脳と話す機会があり、「ビジョンセンサーやAIなど持てる技術を駆使し人間の手のように柔軟でどんな形状でも掴める多品種少量生産用のロボットハンドって出来ないものでしょうか」と質問したところ、「人間の手はエネルギー密度が高く20数軸の軸制御が必要となり、そのドライブモーターやアクチュエーターをハンド内で構成しようとすると恐ろしく大きく重くなり、実現には何十年もかかるでしょう」との回答でした。理想のハンドは遥か彼方ですが、人間の持つ能力の深さに感慨深く思った次第です。